ゴツン。
と音をたてて少年は頭を上げる。
今のは、頭が扉にあたった音だ。
天上を見あげ、電気を睨みつける。
もう扉を叩く音は聞こえていなかった。
あれから、どれくらい経ったのだろうか?
時間の感覚がまるでない。
いつから、例の音が無くなっていたのかもわからない。
とりあえず、人間だったという事が唯一の救いだ。
男か女かはわからない。
頭があって、腕が2本あって、体があって、足が2本あって・・・。
あれはどう見ても、人間だ。
何かを、考えているらしく少年はその場を動かない。
天上を見上げたまま固定されている。
ピーン・ポーン!
と、突然間の抜けた音がする。
予想もしてなかった音に少年はビクリと体をすくませる。
そして、凍りついたように動かない。
チッチッチッチッチ・・・・
と床に置かれた目覚し時計だけが音を立てている。
そして、再び間の抜けた音。
ピーン・ポーン!
その音を聞いてようやく少年は動き出す。
のそり、と立ち上がり先ほど何度もしていた事を繰り返す。
一瞬、また「あいつ」がやって来たのかと思ったが。
2度目の音で気がついた。
「やつ」はインターホンなんて鳴らさない。
しかし、こんな真夜中に誰が、何の用だというんだ。
覗き穴に目を合わせ外を確認する。
あれ・・・?
明るい。
「てか、何だこいつ。」
外が明るい。おかげで外にいる人間が誰なのか確認できた。
そこにいたのは、先ほど電話で話したばかりのクラスメイトだ。
ドアノブに手を掛けながら考える。
さっきは暗かったよな・・・?
「よう!」
「・・・よう、じゃねぇよ。何の用だよ。つーか、いつ来た?」
「そりゃ、今。電話切ってからすぐ。なあ、上がっていい?」
「・・・・・・・・。」
返事をするのも面倒なようで、少年は無言で突然やってきた訪問者を招き入れる。
そして、適当なところへ座れと促す。
「何か、飲むか?」
「ビール。」
「あるわけねぇだろ。」
「じゃあ、チューハイ。」
「お前、いっぺん殴られたいか?」
「あはは。冗談だって、何か温かいもんがいいな。外、寒くてさ。」
PR