普段は家に人がいる場合は鍵を掛けていることはない。もしかして、僕を置いて食事にいったのか?
あの人(祖父)ならありえる話すぎて、何故だか笑いがこみ上げてくる。
「はっ、ははは・・・。」
「やっぱり・・・誕生日なんか嫌いだ。」
ドアノブを握ったまま、ドアに寄りかかる。念のためもう一度回してみるが、やっぱり開きそうもない。
それでも、まだ、そんな事信じずにはいられなかった。
最後の望みのインターホンを押してみる。
ピーンポーン。
先ほどのエレベーターよりも間抜けな音。なんだか悲しくなってくる。
「・・・・・・。」
しばらく待ってみるがやはり反応が無い。仕方がないので鍵を開けて入るしかない。
ポケットに手を突っ込んだとき、家の中から何かけたたましい音が響いた。
トゥルルルル!トゥルルルルル!
電話の音だと気づくのにしばらくかかった。急いでポケットから鍵を取り出そうとするが、中々うまくいかない。手が抜けたと思ったときには、手の中は空だった。
金属がコンクリートに落ちた音がして、そこで初めてきちんと握っていなかった事に気づく。
「くそっ。」
こんな時に限って・・・。早くしろと言わんばかりに電話は鳴り響いている。
トゥルルルル!
何、お決まりみたいな事をやっているんだ僕は・・・・。慌てて鍵を拾って、鍵穴に差す。
鍵を回すと、ガチャリと音がして鍵が開いたことを知らせる。久しぶりに自分で開けた鍵はひどく重く感じた。
トゥルルルルル!!
玄関を勢い良くあけると、玄関越しでもけたたましく聞こえた電話の音が余計にうるさく聞こえる。家の中は真っ暗だった。それを見て一気に冷静になる。何でこんなに焦ってるんだ?
「こんな大きな音だったっけ?」
靴を脱いでリビングに向かう。普段から、こんなに大きな音だったかどうか記憶に無い。しかし、電話の相手は相当しつこい人間らしい。
「はい。もし、もし?」
漸く電話を取ると、相手の人間は一気に喋りだした。
「あっ、やっと繋がった。もしもし?一ノ瀬さんですか?こちら・・・・・総合・・・ですが、今日、午後一時ごろ・・・の事故に・・・巻き込まれて・・・さん、・・・さん、・・・さん、の三名がお亡くなりに・・・・もしもし、大丈夫ですか?警察の・・・方も・・・・他にご遺族の・・・連絡・・・ですから今すぐに・・・病院に・・・・・・さい。」
ツー・・・ツー・・・
若い男の声だった。
PR