気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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止まったのは手だけではない。
玲の動きそのものが止まってしまっている。
「玲?」
「みず、あれ」
「あれ?」
玲が声だけで示したのは、闇の深い場所だ。
何もないと思っていたのに、そこには何かが浮いている。
ギシ、ギシ、ギシ
と床を歩くのと同じような音が響いてくる。
しかし、床を歩く音とは少し違う。
「ランプ?」
その、何かはゆらゆらと揺れている。
そして、それは少しづつ大きくなってくる。
階段を下りているという事が分かったのは、その姿がボンヤリと見え始めてからだ。
ランプを持った小柄な人物が階段を下りてくる。
2人には見ていることしか出来なかった。
しかし、ランプの灯りでは顔までは見えない。
件の人物は階段を下り終ると、彼女たちの存在を無視して壁際へ向かう。
すると、彼女たちが気付かなかった物がそこにはあった。
その人物は手に持つランプから壁へと灯りを移す。
その時始めて、顔が見えた。
老人だ。
しかし、どこかで見たことがあるような、そんな親近感を感じる姿だ。
老人は残りの5つにランプをつける。
ランプは左右の棚の間に3つづつ。計6つ存在する。
全てのランプに火がつくと、ようやく部屋の中を見渡せるほど明るくなった。
「やぁ、お嬢さん方。暗かったろう?客なんて滅多に来ないもんでなぁ」
とお爺さんは明るく笑う。
2人は顔を見合わせるしかない。
不思議そうに、お互いの表情を確認する。
「いらっしい。さぁ、お嬢さんの探し物は見つかったかのぅ?」
にっこりと微笑みこちらへ向かって歩いてくる。
「あの。お1人で経営されているんですか?」
何故か、瑞希の中にはそんな疑問が浮かんだ。
多分、理由としては並べてある品物と、お爺さんとが上手く結びつかないからだろうか。
「いや。わし、1人ではないよ。もう1人おる」
「お爺さん、あ」
玲のセリフが途中でお爺さんの上げられた手により止められる。
「人には、翁と呼ばれている」
「あ、えっと、じゃあ翁さんもう1人の方って・・・」
と再び玲のセリフが再び途中で止まってしまう。
玲の視線の先では、お爺さんが、いや翁が何か作業に没頭している。
「あの!これっていくらですか?」
しかし、瑞希はそな彼の行動を無視して声をかける。
ついでに、玲の発言も無視だ。


「おや?探し物が見つかったのかい?」
「ちょっと、瑞希」
「はい。これが欲しいんです」
あくまでも、瑞希は玲を無視する方向だ。
「そちらのお嬢さんは?」
「え?あっ、私ですか?」
急に声を掛けられた、玲は何を聞かれたのかいまいち理解していない。
対する翁は、何も気にしていないような表情、ニコニコと笑顔を振りまいている。
「ちょっと、貸してもらっていいかな?」
「はい」
翁は瑞希から腕時計を受け取り、店の奥へ向かう。
階段を中央に見ると、向かって右側にサンタの人形が存在し、その反対側に翁は向かっている。
その先にあるのは、壁を背に、やや高めの机に囲まれた空間だ。
中には、回転する椅子ー職員室に良く置いてあるアレだーが置いてある。
そこに座ると、どう見てもバーコードが読めそうもないレジに向かう。
カチカチとキーを打つ音がしたかと思うとピーという音の後にガッ・・・ちゃん、と途中引っかかりながらも、思い切りよくレジが開く。
その一連の動きは、今にも壊れそうで見ていて怖い物がある。
瑞希はさっさと会計を済ますと、玲を引きずって店を後にした。

「ちょっと!何でそんな急いで出ていくのさ?」
「だって、何か・・・。そっ、そういえば、玲は何を聞こうと思ってたの?」
「え?ああ、うん。それがさ!噂を聞いたって言ったじゃん?」
「うん」
嬉々として語りだす玲は話をすり替えられた事には気付いていない。
「その噂が、あの店に不思議な子がいるっていう・・・」
「不思議な子?」
「うん。あんま詳しく聞いてないから何とも言えないんだけど・・・それが、どう不思議な子なのかなぁ・・・・っと」
「確か、あのお爺さん、もう1人いるって言ってたよね?」
「うん。だから、今日は休みなんですか?って聞こうと思ってたの」
「ふ~ん」
「それでさ、瑞希?」
「ん、何?」
「腕時計を買おうと思った本当の理由は?」
「んげ」
瑞希はおかしな声でうめいてすぐに何かに気がつき嫌な顔をしながら玲に尋ね返す。
「由月に頼まれたの?」
「へへ~。秘密ぅ~!」
嬉しそうに、笑う玲を他所に瑞希は浮かない顔のまま語りだす。
「ん~、なんかさ」
「うん」
真剣な話だという事に気付いたらしい玲が、真面目に返事を返す。
「自分で時計持ってるとさ・・・時間を操れるようになった気がしない?」
「時間を?」
良くわからないというように、玲は瑞希の言葉の一部を繰り返す。
「なんかさ、納得いかないんだよね。」
「うん」
あえて、玲は「何が」と問う事はしない。
「だから、何かのきっかけになればいいと思って」
「なんか、かっこいい」
心底感心したように玲が瑞希を見る。
対して中身を聞かなくても瑞希の「何か」を感じ取ったらしく、多くを聞かずに感想だけを述べる。
「何それ?」
「だって、そう思ったんだもん」
「変なの」
「そぉ~?」
惚けながら玲が瑞希にしがみ付く
「ちょっと、あき、歩きづらい!」
「きゃははは」
「笑ってる場合じゃないでしょ!」
行きは苦労して登った坂も、帰りは楽に下って行ける。
2人の少女が、じゃれ合いながら夕日を背にして駅へと向かう

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