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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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さくらの便り 9


「墓、少なくね?」

水道の前を通り過ぎるとすぐに
御墓がいくつか見える。

歩いている所よりも
いくらか高くなったその場所には
数えられるほどしか御墓が存在しなかった。

「上」

クギの言葉に対してシンの一言。

彼の言葉通りさらに上が存在した。
先ほどのぼった坂道よりもきつそうなその上に。
一応とばかりに階段が横についているが
歪なものなので上り辛いこと間違いなしなので
自然と足は坂道を選ぶ。

「なんつーか。
お年寄りと小さい子には不親切な墓だな」

クギがボヤキながらも坂をあがる。
おれは無言だ。
短い坂道なのにどっと疲れる。
この寺はおれ等にいったい何を求めてるんだ。

坂道を登りきれば確かにそこにはいくつもの墓が存在する。

しかしもっと気になるものが眼前にはあった。

「シンくーん。もしかしなくても
この上にもあるんですかー?」

呆れ混じりの抗議の声。

そう、さらに上があるのだ。
しかも、今度は階段のみ。

「安心しろ、あれが天辺。そっから先は下るだけだ」

「オレこんな体力求められる墓には眠りたくないな」

「死んだ後は関係なくね?」

クギの言葉に思わずツッコミを入れるおれ。

「残された遺族にそこまで迷惑かけたくないし
嫌がられたくないって話」

「あ、なるほど。
死んでまでウザいとかちょっとヤダな」

「あれ?ソウくん。
それはオレが生前ウザったいっていう設定の上で?」

「違いましたっけ?」

周りにある墓をきょろきょろと見ながら
クギとフザケタ会話を交わす。

基本的に彼に言葉でかなう事はないが
時々強気に出たいと思う時がある。

「安心しろ。お前ら二人究極にウザいから」

前を歩いていたシンが立ち止まり
振り返ったうえで力強く言いきった。

「「ですよね」」

異口同音のおれとクギ。
これがいつものパターン。

10段ほどの階段を上がれば
当然そこにもいくつもの墓が並んでおり。
どこからどう見ても墓地だ。

少し歩けば木々に覆われていた視界が広がり
有名観光地のどくとくな形をした建物を中心にしたビル群が伺える。

「おー、いい景色」

クギがわざとらしく額に手をあて遠くを眺めるポーズを取った。
おれも立ち止まり遠くを眺める。

「もしかして花火見える?」

「ソウ、それ本気?」

クギの言葉を受け考える。
ここがどこかを一瞬忘れていた。

「・・・考えなしでした」

「そのない頭使って良く考えろ」

「え?」

景色を堪能していたおれ達とは
あきらかにテンションの違うシンの声。

「モトキサユという名に覚えは?」

「もとき、さゆ?」

突然出てきたその名前。
シンの発言の意図が分からない。
もっと分からないのはその名の出所だ。

「誰さん?」

「俺が聞きたい」

クギがシンに尋ねるが
シンの答えはそんな冷たいもの。

これはおれが思い出さなければ
いけないということか。

モトキサユ。

女だよな…。

「クギ、モトキという名の墓探せ」

「ラジャ」

考えている間にクギはさっさと別行動へと移ってゆく。
シンは探せと簡単に言っているが
見える範囲だけでも墓の数は半端ない。

「ソウ、お前は思い出してろ。この際下の名前は気にするな
モトキと言う名に覚えがないか?」

もとき?

「本に貴人の貴で本貴だ」

「本貴…?あれ?それってクギに言わなくていいのか?」

考えようとしてふと気付く。
墓に掘ってある名はみんな漢字だ。
字面が分からなければ探しようがない。
小さな舌打ちが聞こえたかと思うと
シンが走り出す。

どうやら失念していたらしい。

にしてもダレだ。


 
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