気の向くままに徒然と・・・
| Admin | Write | Comment |
カウンター
New!
~足跡~
[01/12 館主 遼]
[01/12 nameress]
[05/20 館主 遼]
[05/20 蒼月薫]
[04/11 館主 遼]
プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
Letter
バーコード
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

さくらの便り 5


「人の血を奪いし生ける花…か」

「え?」

桜に見入っていたおれの横で
シンが呟く。

「奪う?」

「あれ」

おれの疑問の言葉にシンは桜に視線を固定したまま
言葉だけで何かを示す。

「何?」

生憎、それだけでは分からない。

「あらま」

クギは何かが見えているらしい。

「根本」

シンの言葉のままに視線を下へと移す。

「何、あれ?」

桜の根本には
小さな箱のようなものぽつんと置いてある。

「何って、なんだろうね」

クギのどこかやる気のない言葉。
しかしそんな言葉とは裏腹に彼は桜へと近づいて行く。

その後をシンが仕方なくといった足取りで続いていた。

「って、だから置いてくなって」

二人の後をおれは慌てて追いかける。

「迷子?」

「そんな可愛いもんか?」

クギの言葉にシンが返す。
二人が箱に近づき何とも不思議な言葉が交わされる。

「じゃあ、忘れもの?」

「明らかに意図的だろ」

二人から一歩離れた場所にいるおれは
それ以上近づけない。

「ここにどうしてもいたかった」

「自ら出てきたとでも?」

冗談なのだろうが、声色が真剣そのものだ。
何故この二人はこうも冷静でいられるのだ?

「それ、ホラーじゃ済まされないし」

「待て待て、お前らもっとこう…違うだろ!?」

クギの言葉に彼らの呑気っぷりにいい加減ついていけなくなり
言葉を挟むが、それは上手くはいかない。

「何、ソウ?」

「何で、そんな冷静なの!?二人とも!」

「逆に、ソウは何でそんなに慌ててるの?」

クギに問われ、逆に問い返すがシンに不思議そうに問われる。

「あ、慌ててるんじゃなくてビビってるんだ?」

ぐっ、と詰まったおれにシンが面白そうに笑いながらそんな事を言う。

「待て待て、待て!。それはクギの役目、シンの役目じゃないっしょ
シンはもっとこう興味なさげにだな・・・・」

無意味に慌てるおれの目の前に差し出せれる白い箱。

「どうぞ」

にっこりと微笑むシン。

勢いに任せて首を振るおれ。

それを、今にも転げて笑いだしそうなクギが見ている。

手渡してどうするつもりなんだよ。


だいたい自分はこれを始めて目にしたのだ。

「何?触るのもやなの?」

うん、うん、うん。

と大げさに何度も頷きながらも頭に浮かぶ疑問を
考えるまでもなく口にする。

「でも、これなに?どなた?なんで?」

「知るか」

対するシンの答えはとてつもなく短い。

「ですよね」

「問題はどうするかだよな」

「え?」

「さすがにこのままにするのはまずいだろ」

白い箱を胸に抱え考え始めるシン。
おれからすると、それを胸に抱えていられるのがすごい。
白い箱は世間一般的には骨壺と呼ばれるもの。

「捨ててあったのか、意図的に置かれたのか
ただ置いてあっただけなのか」

今のところの身内はみんなピンピンしている訳で
こんな近くで目にしたのは初めてなのだ。
知識だけで知っているそれは、人の骨を入れるものであり
どこか不気味な印象がある。
故におれにとっては恐怖の対象でしかない。

「待てよ」

シンの独り言のような呟きを聞きながら
彼から1歩離れる。

「待て待て、待つのはお前だ!何を!?シン!」

彼の動きを見てそれがどのような結果をもたらすのか
容易く想像がつく。

「ソウ、煩いよ」

「いや、だって!シン、お前何するつもりなの!?」

「何って。中身、入ってるかどうか確認しようと思って」

蓋に手をかけたまま五月蠅そうに眉を顰めるシン。

「いやいや、確かめてどうすんの?まずいっしょ!
そういうの開けちゃまずいっしょ!?」

シンを抑えたいが、骨壺には触りたくない。
ちなみにクギは背後で笑い転げているいるので役に立たない。

ついでに言えば彼にとって何がそんなに面白いのかも理解しかねる。


 
PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[370] [369] [368] [367] [366] [365] [364] [363] [362] [361] [360]
忍者ブログ [PR]
material by:=ポカポカ色=