10段ほどの階段を上がれば
当然そこにもいくつもの墓が並んでおり。
どこからどう見ても墓地だ。
少し歩けば木々に覆われていた視界が広がり
有名観光地のどくとくな形をした建物を中心にしたビル群が伺える。
「おー、いい景色」
クギがわざとらしく額に手をあて遠くを眺めるポーズを取った。
おれも立ち止まり遠くを眺める。
「もしかして花火見える?」
「ソウ、それ本気?」
クギの言葉を受け考える。
ここがどこかを一瞬忘れていた。
「・・・考えなしでした」
「そのない頭使って良く考えろ」
「え?」
景色を堪能していたおれ達とは
あきらかにテンションの違うシンの声。
「モトキサユという名に覚えは?」
「もとき、さゆ?」
突然出てきたその名前。
シンの発言の意図が分からない。
もっと分からないのはその名の出所だ。
「誰さん?」
「俺が聞きたい」
クギがシンに尋ねるが
シンの答えはそんな冷たいもの。
これはおれが思い出さなければ
いけないということか。
モトキサユ。
女だよな…。
「クギ、モトキという名の墓探せ」
「ラジャ」
考えている間にクギはさっさと別行動へと移ってゆく。
シンは探せと簡単に言っているが
見える範囲だけでも墓の数は半端ない。
「ソウ、お前は思い出してろ。この際下の名前は気にするな
モトキと言う名に覚えがないか?」
もとき?
「本に貴人の貴で本貴だ」
「本貴…?あれ?それってクギに言わなくていいのか?」
考えようとしてふと気付く。
墓に掘ってある名はみんな漢字だ。
字面が分からなければ探しようがない。
小さな舌打ちが聞こえたかと思うと
シンが走り出す。
どうやら失念していたらしい。
にしてもダレだ。
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