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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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城から馬車に揺られて半日。陽がすっかり上りきり、傾きはじめた頃にようやく学園に到着した。

一番初めに訪れたのは理事長室。

「久しぶりだね、二人とも。元気そうでなによりだ」
「お久しぶりです。理事長こそ、お変わりないようで」
頭を下げただけの自分と違い、ニッコリと笑顔を貼り付けたシュタが、当たり障りのない言葉で挨拶を返した。
そこから、当たり障りのない世間話が始まる。
「聞いて喜べ、君たちの記録はまだ破られてないぞ。きっとこれからも破られる事がないだろうね」
「それは良かったです。学園の歴史に名を残す事ができて光栄です」
「明日で二人とも正式にこの学園を卒業できるわけだが、気分は?」
「縁が切れると思うとスッキリしますね」
変わらぬ笑顔でシュタが言い切り、同じように笑顔だった理事長から笑顔が消え去る。
自分がこの学園を仮卒業したのはおよそ3年前だ。
本来ならば、最低でも9年通う必要のあるところを6年で卒業した。通常授業で行われた実技の好成績、卒業試験の合格点を理由に理事長を説得した形になる。
シュタは遅れること半年、全ての筆記試験で過去最高点をたたき出して卒業を許された。
「次に会ったとき、私は君を王子と呼ばなければならないのか」
「嫌なら結構ですよ?理事長は僕にとっては永遠に理事長ですから。理事長から見たら僕は永遠に生徒だ」
「なるほど」
この二人はわざとやっているのだろうか?毎回思う疑問だ。
「否定しないんですね」
「ははは。そんなことは無い。君は優秀な生徒だったからね。私にとっては自慢の生徒だ。もちろん君もだ」
理事長の視線がシュタから自分へと動く。何か含みがあるような表情をされたので、目を合わせることはしなかった。
「理事長、話がかみ合ってませんよ?」
「おや、そうだったかな?おっと、やっと来たようだ」
理事長の惚けた声と重なるように、理事長室の扉がノックされた。
「入りなさい」
理事長が入室の許可を言い渡すが、数秒の間。
「失礼いたします」

扉の向こうで声が響き、ゆっくりと開く。
「理事長、お二人のお部屋の準備が整いました」
「そうか、二人とも悪いが同室だ。準備ができたようだから案内してもらうといい」

「ルームメイトって事ですか?」
シュタが感情の篭らない声で尋ねると、理事長は軽く頷く。
「シュタ、嫌なら俺は外で構わない」
シュタの言葉を聞き、何か言われる前に先手を打つ。職業柄、野宿だってそれなりにこなしている。幸い今は凍え死ぬような季節ではない。
「どうして、そうゆう展開になるのさ。何年もずっと同じ部屋にいたんだから、今更だよ。むしろ、僕は嬉しくてしょうがない」
「ならば、なお更外がいい」
「だから、なんでそうなるの?キミは僕と同室は嫌なのかい?」
「お前といると面倒な事になるからな」
「嫌なんだ」というストレートな言葉は飲み込み、ほんの少しだけ含みを入れたニュアンスで同じような言葉。
「何言ってるの、今回はその面倒なことに巻き込まれにきたんじゃないか」


「さて、仲がいいのは良く分かったから、早いところ部屋へ行ってくれ、私はこれでも忙しいんだ」
「あんた、忙しいのか?」
あまりにも驚いて、ついうっかりそんな言葉が出てしまう。
「やっと私にむかって喋ってくれたと思ったら、そんな言葉かい?」
「いや、あんたはいつも遊んでるようにしか見えないから」
「シュタルク君。彼はこんなことをいう子だった?」
「ええ、僕の記憶が正しければ、言いますね。そして、あなたと喋るのは面倒だから、あまり喋らないというのも聞いたことがありますし」
「シュタ」
静止の言葉はもう何の意味も無い。
「早く行くぞ、休みたい」
彼の視線を確認して、まったく別の話題へと移す。
「そうだね、僕も疲れた。明日に備えて今日はもうゆっくり休もう。そんな訳で、案内をお願いしても?」
先ほど入ってきた男にシュタが話し掛けた。
「もちろんです。さあ、どうぞ」
爽やかな笑顔と共に、廊下へと促す。
「ありがとう」
「どうも」
礼を言うシュタに習い自分も礼を言って、扉を押さえる男の前を通り過ぎる。
部屋を出て、理事長室を振り返った。
「じゃあ、理事長。また、明日」
今までの会話とは異なり、砕けた言葉で話しかけるシュタ。
「ええ、明日。どうか、ごゆっくりおくつろぎください、シュタルク王子。我が学園は全力であなたの身の安全を確保いたします」
対して理事長の言葉は丁寧なものになっていた。
やはり、この二人のやり取りはわからない。
理事長の言葉を聞いたシュタはクスリと笑いを漏らす。
「うん。お休み、叔父上」
「ああ、お休み、我が甥よ」
「相変わらずだな」
「何が?」
「お前と理事の会話」
「相変わらずって?」
「何を持って話しているのかさっぱり分からない」
「理事長と生徒であり、国民と王子であり、叔父と甥であることを考えると自然と・・・」
つまり、理事長は現国王の弟であり、シュタの伯父にあたる人物なのだ。
本来ならば城の中で働く権利のある人間だ。けれど、彼は国王の座を早々に兄に譲り、そして王家を出てこの学園の理事長に就任した。
そして、校内での家柄をまったく無意味なものへとしてしまったのだ。
どういう事かというと、校内にいるかぎり、どこの貴族だろうが、王子だろうが皆平等だということ。


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