「お疲れ様」
「どうも」
彼に連れられ、馬車に乗り込んだ。
この国では、6歳をすぎると学校へ通う習慣がある。主に貴族の子どもが通うものだが、能力さえあれば誰もが通う事が可能だ。
彼とはそこで出会った。シュタルク・H・アタナシアそれが彼のフルネーム。
「部屋を汚されるのが一番嫌いなんだ。何も触らずにさっさとそれを流してこい」
やや命令口調で言われると冗談には聞こえない。
「着替えは仕方が無いから、貸してあげる」
「恩に着る」
「構わないよ。これから命がけで仕事してもらうから」
短く礼を言うと、冗談のような本気の一言が返ってきた。
彼の部屋に来たのは初めてではない。もちろんシャワーを借りるのも初めてではない。
授業で彼とは何かとパートナーを組む事が多かったのでその縁もあって、何度か来ていた。
そのとき彼の兄弟たちにも会っているし、国王にも何度か会っていた。
大して前ではない昔の事を思い出しながら、他人の血を洗い流し置かれていた服を手に取る。
その触りなれた手触りに嫌な予感を感じ取るが、着るものがそれしかないので仕方なく身につけ、その場を後にした。
「シュタ、これはどうゆうことだ?」
「やあ、早かったね。うん、やっぱりキミはそれが似合うよ」
置いてあったのは、軍服にも似た、何年もお世話になった学校の制服だった。
シュタを見れば、彼も同じものを見につけている。
「今すぐ説明を求める。内容次第では、冗談じゃ済まされないぞ?」
「嫌だな、本気で怒らないでよ。冗談でそんなもの用意できるほど、僕も暇じゃないし、おかしな趣味もない」
「仕事なのか?」
「そう仕事の1つ。同時にいろんな問題が起こってさ、さすがに1人で対応できないなと思って、君を呼んだわけ」
「ちょっと待て、ひとつということは」
「まあ、その辺は後々。まずは久々の母校訪問と行きましょう」
納得がいかない。そんな思いを抱えながらも彼について歩き出す。
どうやら休む間もなくでなければならないほど、急ぎの用事であるらしい。
「気づいた事が1つあるんだが」
「ん?何」
「どうして、俺達が制服を着る必要が?」
確かに学生は校内にいる間は制服を着用しなければならない。しかし、自分達は卒業生だ。
私服で行っても何の問題もない。
「例外だという事を忘れたの?」
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