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「ん~、なんかもうちょっと考えて行こう!」
「無理だろ」
「え?なんか酷くない?即答で否定って」
「お前の場合、今ここでそうやって考えるだけで十分だよ」
「何それ?」
「考え続けるのは俺の役目」
二人して煮詰まっていたら、生きていく意味がなくなってしまう。
「じゃあ、オレは?」
「知るかよ。自分で考えろ」
「かなたさ~ん、自分で言っといて、最後投げるなんてひどい」
「うるさい、てか、声がでかい。逃げるだろ、蛍が」
今まで小声で喋っていたのが全て無駄になるのはごめんだ。
来たときに比べるといくらか減ってきた光を見ながら、永夜を無視して黙り込む。
「来年も」
「来るつもりだよ」
来るか?と聞くつもりだったがそんな必要はなかったらしい。
「俺は一人で来るぞ」
「かなた、それはそれで寂しくない?」
「寂しいだろうけど、なんとなく」
「ふ~ん。変なの」
「たまにはな」
「オレは一人じゃ嫌だから、そん時は付き合ってね」
「気が向いたらな」
そう言いながら僕は立ち上がる。長いこと同じ姿勢だったために、多少の痺れがあるが仕方ない。
「先帰る」
「ん」
まだ帰りそうもないだろうと、なんとなく感じとっていた。
お互いに一人になりたい時がよく分かる。
だから、どちらかが行動にでる。基本的に自分が動くことが多いのだが、それは気のせいだと最近気がついた。
永夜は一人でいなくなる時が良くある。それは1時間だったり、1週間だったりとばらばらだ。
それも、まるで前兆もなしに出かけてゆくからこちらとしては、面倒なことばかりだ。
もしかしたら、今夜もこのまま帰ってこないのかもしれない。
一人、家までの道のりでそんな事を考える。
「星が出てれば良かったのに」
空を見上げて、そんな事を思う。
時間が気になり腕時計を見れば、9時を過ぎたところだった。
遠回りして帰るか・・・。
終わり。