ボクが戸惑っているとヨアケはフェンスの上に立ち上がった。
フェンスの高さは結構ある。
多分、140cmくらい。
自分の身長から考えたから結構正確だ。
「大丈夫、落ちることはないよ」
フェンスに近寄って触れてみる。
視線の先には先ほどまでいた場所がずっと下に見えた。
ぱっとフェンスから手を離してボクは呟く。
「無理だよ」
「大丈夫、ほら」
ヨアケは先ほどから同じ台詞を繰り返していた。
そして、ニッコリと笑って手を差し出してくる。
「掴まって」
ボクには無理だ。
こんな高いところには昇りたくない。
けど、やっぱり昇ってみたいという気持ちもあった。
迷っていたけれどボクは無意識にヨアケに手を差し出していた。
その手を掴まれ、グッと引っ張られる。
「わっ!待ってってば、ボク乗るって言ってない!」
突然の事と恐怖とでちょっとしたパニック状態でボクは叫んだ。
「もう遅いよ」
また、ヨアケの声が近くで聞こえる。
彼の言葉で自分がいる場所に気がついた。
ヨアケと同じようにフェンスの上に立っている。
あれ?
怖くない。
いつもは見えないようなところまで
ずっと遠くまで見える。