お日様が見えてるのに
雨が降った
「狐の嫁入りだよ」
誰かが言った。
ボクはその人を見あげる。
「狐?」
「そう、狐」
どうして、雨と狐が繋がるのか分からない。
「ごらん、虹が出てきた」
今度はその人が遠くを指差しながら
ボクを見る。
ボクは、その人がさす先を見た。
「ホントだ」
大きな虹が空いっぱいにかかる
綺麗な虹だった。
「私はね、子ども頃から不思議に思ってた事があるんだ」
隣に立つ男の人が語りだす。
「あの虹の向こう側には何があるんだろう?ってね」
「虹の、向こう側?」
「不思議じゃないかい?」
そうは言われても良くわからない。
そもそも、あの透けるような虹に「向こう側」が存在するのだろうか?
だからボクは首をかしげる。
「伝わらなかったかな?じゃあ、あの虹の始まりは?」
「そんなのないよ」
虹は浮いてるんだ。
どこにも、始まりも終わりも存在しない。
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、あれは雨とお日様が見せてくれる幻なんだ。だから、始まりとか終わりとか確かなものはないんだ」
「へぇ、それはダレに聞いたの?」
「父さんに・・・」
「じゃあ、一緒に見に行って見ようか?」
「え?」
「連れて行ってあげるよ。それで、見せてあげるよ虹の秘密を」