「『虹太、ごめんな。やっぱり父さん謝らなきゃいけない。
だって、これからお前には辛い事がいっぱい待ってる。それを母さんと一緒に乗り越えてほしい。本当にごめんな。
お前たちを守っていきたかったけど、父さん肝心なとこで失敗したみたいだ。
悲しければ泣いたっていい、辛ければ泣き叫んで辛いと言えばいい。無理はするな。
虹太、強くなれ。そして、人の痛みのわかる優しい人になってほしい。』」
ヨアケの声に重なり父さん声が聞こえる。
最初よりもずっと遠くにいってしまった虹が涙で滲む。
薄い虹色が溶け合って、ボクの視界の中に溢れた。
「・・・う・・・こ・・・・・・うた、こうた」
遠くで名前を呼ばれた。
ヨアケじゃない、女の人の声・・・母さん?
「こうた?起きなさい」
「母さん?」
目を開けると泣いてる母さんが目の前にいた。
「母さん、どうしたの?」
「どうしたの?じゃないわ。虹太、あなたを探してたんじゃない。急にいなくなって・・・」
「ごめんなさい」
ボクが謝ると母さんの目から涙が溢れ出す。
「私のほうこそ、ごめんなさい。虹太だって泣きたいわよね。だってお父さん大好きだものね?あなたの気持ち気づいてあげられなかった。私のために我慢しててくれたんしょ?」
母さんの言葉を不思議に思い、顔に触れてみる。
泣いていた。
ぎゅっと母さんがボクを抱きしめた。
涙が後から後から流れて止まらない。
「さあ、火葬場にもどりましょう?あの人が待ってるから」
母さんが涙を拭いて微笑んだ。
そして、ボクの涙をハンカチで拭く。
葉っぱだらけの黒い服を叩いて立ち上がる。
綺麗に弧を描いていた虹はもう既に半分も残っていない。
虹が好きだった父さんは、ボクに虹太という名前をくれた。
晴れた日曜の午後はいつも父さんと庭に水をまいて虹を作って遊んでた。
「そんなに水をまかなくていい」って母さんに怒られながら。
今度、母さんのために虹を作ろう。
「ありがとう」
きっとどかで聞いてるよね。
父さんもヨアケも。
「ありがとう。ボクはがんばるよ。母さんのために父さんのために、そしてボクのために」
消えかけた虹に僕は呟いた。
「私の名は夜明。
キミの真っ暗なココロにもやっと夜明けが訪れた」
おわり
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