自然な動作で玄関ホールを過ぎ階段を上がり始めるレイス。ふとここで疑問に思うことがある。
「で、レイス。僕らの部屋はどこになるの?」
「もちろん、最上階」
疑問に思ったことをシュタが聞いてくれ、解決はしたが、このまま最上階まで行くと考えるとあまりいい思いはしない。最上階は5階。見晴らしはいいが上までに行くのにかなりの体力が必要だ。
「食事は、時間ずらしてもらえるように料理長に頼んどいた」
「助かる」
レイスの言葉に短く答えたのはシュタだ。
「いいえ。お前ら二人とも人気ものだからね。迂闊に動いて騒ぎになるのは避けたかったから」
「さすが」
と今度は俺が賞賛の一言を発する。
レイスの言った理由は冗談のようなもので、時間をずらした本当の理由はシュタだけにある。
単純に彼が王子だからだ。
いくら学園内といえども何もないとは限らない。在学中はそんな特別あつかいはありえなかったが今は状況が違うのだ。
「いまはダレがいるんだ?」
5階は特別な階となっており、だれでも行けるわけではない。
成績優秀者と寮長、その他特例が認められた人間だけが出入りできる。
「ん~、おれだけ」