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プロフィール
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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

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さくらの便り 18

「ホント、忘れてた。そんなこと。おれ、そのあとショックで熱出して
寝込んじゃったんだ」
 
「その間に私たちは引っ越してしまったんだ」
 
ソウの言葉はどこか痛々しい、そんな言葉に続く形で話始める人間がいた。
 
「本当はきみに会わせてから行きたかったんだけれど」
 
中途半端に途切れる言葉。
誰も口を挟まずに次の言葉を待つ。
 
「それがきっかけではないだろうけど、体調を崩して…世間では色々と騒いでいたのもあって
逃げるように引っ越してしまったんだ」
 
「おれ、会いましたよ」
 
「え?」
 
予想もしていなかった言葉だからか俯いていた男がパッと顔をあげた。
その表情は信じられないというもの。
 
「おれ、引っ越す前のサクに会いましたよ。話をしたんです」
 
「いつの間に」
 
「えっと、寝たり起きたりしてたから良く分からないんですけど
おれの部屋に来たんです。それで夢を見るって話をしたんです」
 
ソウの言葉に思わす声を出しそうになる。
しかし、今は彼の話を聞くべきだ。
 
「桜の木の下でおれと一緒に、女の人と話をする夢を見るって。
おれ、それ聞いて驚きました。おれも同じ夢を見てたから」
 
「同じ?」
 
「うん。あの桜の木の下で髪の長い綺麗な女の人と話をするんだ。
はじめ彼女が泣いてて、それにサクが話しかけた。何か話してたら笑ってくれたけど。
だけど、その人悲しそうな顔して言うんだ。大好きだったのにねって。」
 
クギの言葉に軽く頷いて、思い出しながらだからなのか
どこか、途切れに途切れに言葉を発する。
 
「覚えてるのはそれだけなんだけど…。最後にお姉さんが言ったんだ。
絶対秘密ねって。だからサクと2人で内緒にしようって…
おれ、何でこんな大切なこと忘れてたんだろう」
 
「夢を見てたなんて、初めて聞いたよ。
あの子が起きた時に泣いていたのが何度かあったんだ。
理由を聞いても答えてくれなくて…」
 
咲夢はもっと内容のあるものを見ていたのかもしれない。
ソウはどこか抜けている部分があるから、きっと夢も抜け落ちてしまっているに違いない。
本人が聞いたら怒るであろう事を考えながら、言葉は全く違う話題を選んだ。
 
「ソウ、手紙出るか?」
 
「え?あ、うん」
 
鞄の中から出てきた手紙を受け取り、思っていたことを確認する。


「この手紙を出したのは貴方なんですよね?」
                                                          
右隣りを見ながら尋ねれば、彼は深く頷いた。
 
「彼が亡くなってから」
 
続いて尋ねた言葉にも彼は頷くだけで声を発しようとはしない。
 
どうして手紙が今年は来なかったのか?
それは単に出す手紙が無くなったから。
 
「ああ、咲夢の遺品を整理していたら出てきたんだ。蒼くん宛ての6枚の手紙が」
 
いくらかためらった後に彼は漸く話し出した。
 
「6枚?」
 
ソウが疑問を口にする。
 
「最後の一枚」
 
結局渡せずに持っていた一枚の手紙。
それをソウに渡す。
 
これがなければ、今こうして話していなかっただろう。
骨壷の蓋を開けようと思ったのはどうしてだかは分からない。
 
「ソウ、最初から葉書には全部書いてあったんだよ。
元気ですか?で始まって夢を見ていますか?と」
 
「言われてみれば…」
 
「ついでに、名前だってこの3行の中に入ってる」
 
「え?」
 
「うそ?どこ?」
 
ソウと共にクギまでもが驚く。
 
「お元気ですか?
今年も桜が咲きました
あなたは今も夢を見ていますか?」
 
葉書を読みあげて彼等を順に見る。
 
「お元気ですか?
桜が咲きました。夢を見ていますか?」
 
次は幾らか省略して読み上げる。
 
「あ、元気、でモトキか、咲きましたで夢」
 
クギが自身でしか分からないような言葉で納得する。
 
「あ、確かに。ほんとだ!」
 
しかし、思いがけずソウからも声が上がった。
少し気になって右隣りにも視線を送る。思ったとおり彼も今気がついたらしい。
 

 
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