読めなかった手紙 3
軽食しか置いていないので、そこまで客は来ない。それでも、アルバイトとしてやってきたオレにマスターは次々と仕事をくれた。
お昼の時間が終わると、再び店内は常連客の2人しかいなくなる。
マスターによると、次のピークはおやつの時間の午後3時頃かららしい。
それまでの間はほぼ客が来ないため、お喋りタイムとなるのだ。
「あの・・・前から疑問に思ってたこと聞いてもいいですか?」
「何?イツくん?」
「なんだ、イツ、改まって」
「お2人とも、普段何してる人なんですか?」
平日だろうが、休日だろうが、常にいるこの2人は何者なのだろうか?
それは常日頃から、思っている事だった。最初は学生かと思っていたが、先ほどの歌理さんの話を聞く限りでは学生ではないらしい。
「ん~、あたしは今はニートかなぁ」
「俺はフリーター」
「・・・笹帆さん、いつ仕事してんすか?」
「イツ、お前ってそんな失礼な事言うヤツだったっけか?」
「あ、いや。スミマセン」
「ササ君は気が向いた時しか仕事しないんだよ。しても、一日数時間。一つの仕事が長持ちしないんだって」
「そういう、歌理も似たようなもんだろ?」
「違うよ~、あたしは、しないんじゃなくて、できないの。今はそうゆう気分なの」
「逸貴くん。この2人の話はまともに聞いちゃいけないよ?」
「はあ」
「ちょっと、マスターその言い方はひどくない?」
「そうだよ。確かにいい見本ではないけどさ・・・」
「あはは、人にはそれぞれ合った生き方がある。良い悪いは他人が決めるんじゃなくて、本人が決めるんだよ。だから、僕はキミたちの生き方が間違ってるとは言わないよ」
「さっすがマスター!分かってくれてるね」
「だから、ここに来ちゃうんだよね。ここにはいつきても居場所があるから」
オレにとっては彼女の隣が居場所だった。
いつも側にいた。だから、いなくなるなんて考えた事もなかった。
想像したこともない世界が当たり前のように存在する。
彼女の笑顔を探して何度も何度も夢の中をさ迷った。その度に、彼女の泣き顔に出会う。
ダレが、こんなことを望んだのだろうか?
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