「別に、駄目だって訳じゃない。けれど本来、立警は一つの仕事しかしないんだ」
「一つの仕事?」
「ああ。担当が決まってる」
「担当?」
「・・・・。要するに、決められた仕事しかしないんだ。兄さんたちの場合だったら、仕事は『僕を見つけるという事』だけで、他の事は一切しない。例え、指名手配中の犯人が目の前にいようとも、捕まえる事はしないんだ。」
「じゃあ、何で?」
今回、彼らを追ったのか?
「それを、さっき聞いた」
けれど、答えずに兄さんは行ってしまった。待っていろと言ってはいたが、教えてくれるとは限らない。
「レイブン、座ろう。疲れた」
「ああ、そうだな。うん、座ろう」
そうして、僕らは最初から座っていた位置へと戻る。
「レイン、次の駅までどれくらいか分かる?」
「さあ?多分、まだまだじゃないか。そんなに時間は経ってないと思うけど?」
「そうか?オレは、もう数時間ぐらい経ってる気がする…」
「せいぜい、一時間半ってところだろ。時計ないから分からないけどな」
「前の駅出てから?」
「多分」
「次の駅までじゃなくて?」
「もちろん」
当たり前だろうと言っても、レインは信じられないらしく首をかしげている。
「おかしい、オレの体内時計はいつからくるってるんだ!」
「最初からなんじゃない」
彼の叫びに一応返事をしてみるが、やってはいけない事だったらしい。
「レイン!」
「冗談だって」
名を叫ばれ、その勢いに負け訂正するが、相手にされていない。彼の頭はもう違う方へと動きかけている。PR