「・・・提案というのは、何ですか?」
「ああ。エル女史!どうぞ、お入りください」
ならば、と問い掛けたが、何故か兄さんは扉の向こうにいるらしい、エル女史へと呼びかけた。
しばらくすると、エル女史が扉を開け、ゆっくりと入ってきた
「すまないな、ゼニス王子。説得は終ったのだな?」
エル女史は本当にすまなそうな顔をしながら、兄さんに向かって謝っている。
「いいえ、まだ何の説明もしてません。やはり、こうゆう事はご本人からでないと」
ニッコリといたずらな微笑みを浮かべながら、兄さんはエル女史へと場所を譲る。
対するエル女史は、兄さんにすれ違い様「やられたな」と悔しそうに小声で言いながら、僕の目の前へとやってくる。
何なんだ、この二人は・・・。
「お久しぶりね、アイリス王子。先ほどは驚かされたわ」
「お久しぶりです。エル女史」
お互いに社交的な挨拶をだけで、得にコメントせずに、お辞儀をする。
「さて、何から話したらいいかしら?」
なぜか、今の彼女は女性口調だ。これが、変化する理由を僕はまだ知らない。
彼女はそのまま、考え込んでしまう。
「実はね、私から一つ提案があるの」
考えていたはずなのに、いきなり本題から始まってしまった。どうやら何も話題が見つからなかったらしい。
「はい」
兄さんの時と同様に、大人しく頷いておく。
「先ほどからの貴方を見ていると、私としては、とても何かを感じるのよ」
「はい・・・?」
しかし、まるで意味がわからない。
「私のこうゆう勘はね、外れた事がないのよ。もちろん、それはレイブンにも感じたわ」
話しがまったく見えてこないが、彼女はそれでもいいらしい。
1人で喋り続けている。
「きっと、すごく良い物を持っている。磨けばもっと価値が上がるだろうな」
少しずつ、口調が変わりつつあるのが良く分かる。
「このままでは、もったいない」
そして、一呼吸間をあける。PR