クスクスと笑いながら、兄さんは扉を後ろ手に閉めて、こちらへと近づいてくる。
「若いね、二人とも」
ちょっと前と似たような事を言いながら、僕ら二人を順に見る。顔を伏せて、目を合わせまいとしたが、逆に苦笑されてしまう。
ムッとして見上げると、今度はニッコリと微笑まれる。
「何ですか?」
「はは、そう怒るなレイン。面白いな」
「面白くありません」
「まあ、まあ」
「兄さん!」
「分かった、分かった」
絶対わざとだ。
この人は…いつもこうだ。真面目なのか、不真面目なのか良く分からない。兄さんから視線をそらすと、今度はレイブンと目が合う。彼はなぜか妙な笑みを浮かべていた。
「なんだよ、レイブン」
「ん~、別にぃ」
変な含み笑いをしたままそんな事を言われても、返って腹が立つだけだ。
「レイブン?」
「あっ、いや。さすがのレインも、兄貴さんには敵わないんだなぁと思ってさ」
「何だよ、それは」
「そのままの意味だって、レイン。ねぇ?お兄さん」
「ああ、本当に。分からないのか?レイン」
「ええ、まったく」
不機嫌を前面に出してみるが、二人はまるで構わないと言うように会話を進めてゆく。
「くくく、面白いな。レインやっぱ、お前はガキだわ」
「な、何言ってんだお前!ガキなのはそっちだろ!レイブン」
「まあまあ、レイン。レイブンは、お前の事を可愛いと言ってるんだよ。なあ、レイブン?」
「今の言葉のどこら辺に、そんなニュアンスが含まれていたんですか?」
「何?レイン分かんなかったの?」
わざとらしく驚いてみせながら、レイブンが兄さんに調子を合わせる。
こいつら、二人でいると性質が悪い。
「分かるかよ、そんなもん。逆に含まれていたとしても、迷惑だ」
キッパリと言い捨てて、僕は席へ戻ろうと歩き出す。
「アイリス」
数歩、進んだところで呼ばれて振り返る。
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