周りを凍りつかせるのは、ある意味では僕の特技だ。
遠慮なしに喋るから、周りがついて来れなくなる。
しかも、普段はまったく喋らないやつが急に喋るものだから、余計だ。
「まず、夫婦だって言う割には、指輪してないから」
そう、彼らは変なのだ。
レイブンのように、何も考えてないやつが見る分には何も感じないだろうけど・・・。
まず、第一に服装。
金持ちを装って、無理して着飾っているのが見え見えだ。
きちんと、着慣れた人が着ればらしく見えるのに、こいつらは全然違った。
指輪だって、夫婦は互いに薬指にそろいの指輪を着けるのが普通だ。
しかし、彼らは着けていない。
アガットは指輪を着けてはいるが、それは薬指ではなかった。
「もちろん、爵位持ちかって聞いたのも引っ掛けだ。まさか、本当に乗ってくるとは思わなかったけど」
「すっげ~!?レイン!」
素で感動しているレイブンをよそに、話しの中心に居る偽貴族は気が気でないらしい。
「すまなかった!」
パロットが机に頭をぶつけそうな勢いで下げる。
「キミたちに悪気が有った訳ではないんだ。頼む!この事は誰にも言わないでくれ!今捕まったら、全てがパァーになってしまう。」
先ほどまでの偉そうな態度から一転して、ひたすら頭を下げるパロット。
これでは、周りに「何かありました」と教えているようなもんだ。
「別に、あんたらが何のために、そんな嘘付いてるかはどうでもいいよ。追求はしない。ただ・・・。ここの飯代よろしく」
と、にっこり微笑んでパロットに視線を合わせる。どう見ても、子どもな僕に少し揺さぶりをかけられて崩れるやつなんて、たかが知れている。きっと、計画とやらが全て終わる前に何か失敗して逮捕されるのがオチだろう。
「あ、ああ・・・。わかった」
引きつった表情で返事をするパロットと、その横で青ざめているアガットを置いて僕らは食堂車を後にした。
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