待て!行くな!それは困る!」
急に大きな声で叫んだのは、僕が気絶させたやつだった。
レイブンは急な事で、かなり驚いている。
「頼む!他の人間には連絡取らないでくれ!」
頼むと言われても、正直困るものがある。
無視して、一番後ろの車両に乗っているはずの車掌のところに向かう事にする。
今考えれば、なぜわざわざレイブンに見せに戻ってきたのだろうか?
最初から、車掌の所へ行っていれば、こんな無駄に歩かなくて済んだのだ。
引きずって歩いてくるのも大変だった。
周りからは不審な目で見られ、あまりいいものではなかった。
「うっ!」
歩いていると、急に誰かに襟首を掴まれる。
「ちょっと待て!!レイン!」
急な事すぎて、上手く対応できずに首が絞まる。
ほんの一瞬だが、呼吸が止まった。
手はすぐ離れたが、首のあたりに違和感が残る。
首を摩りながら振り返って思いっきり睨みつけると、レイブンが苦笑いしながら立っていた。
「悪い、レイン。強く引っ張りすぎた」
「まったくだ。手より先に声をだせ。レイブン」
「悪かったって。だってほら、こんな必死に頼まれちゃ聞かないわけにもいかないだろ?」
僕からすると、こんな胡散臭いやつ信じられない。正直なところレイブンの事すら疑っている。
何をどう疑っているのかは分からないが・・・。
「どうして、頼まれたからと言って、こいつの言う事を聞かなきゃならないんだよ。だいたい、何で他のやつに知らせちゃいけないんだ?」
「よし、まず座ろう。な?戻ってこいレイン。ほら、あんたも」
進行方向を向いて窓側に僕が座り、その隣にレイブンが座る。そして、向こう側の座席の真ん中にもう1人が座る。一瞬目があって気づいたことがある。やや茶の混じった赤髪の彼は、瞳も同じ色をしていた。
「え~っと、オレはレイブン。こっちがレイン。あんたは?」
簡潔に自己紹介するのはいいが、人の名を勝手に言うな。
そんな、意味をこめてレイブンに視線を送るがまったく気にしていない。
今朝もこんな事あったな…。
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