気の向くままに徒然と・・・
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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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「デッキへ」
と僕はとりあえず、簡潔に答える。
すると案の定、雑貨屋のお姉さんは表情を曇らせた。
「ここから先は個室車両よ」

お客ではないと判断されたのか、随分砕けた調子で話しかけてくる。
「分かってます」
「分かってて行くの?」
「はい」
・・・・・・。
沈黙。
ガタン、ガタン…
車輪の音だけが、辺りに響く。
気まずいなと思いながらも、僕は意見を変えるつもりはない。
個室車両とは、ようはお金持ちの皆さんが集まった車両だ。
でも、こんなボロ列車に乗るお金持ちなんてたかが知れている。ただ、時々例外があるらしい。物好きな老夫婦が、気紛れを起こして乗る事があるらしいのだ。他にも、急いで遠くへ行きたい場合や、お忍びで出かけたい場合はこの列車が使用される
「気をつけてね。今回の人たち結構、厄介な感じなのよ」
しばらく黙っていたかと思うと、雑貨屋のお姉さんは、ため息を漏らしながらそう言った。
もうすでに、変な文句をつけられたのだろう。
「中途半端な金持ちほど、厄介ですよね」
あまり喋らないつもりでいたが、少しぐらいなら会話をしてみようと試みる。
「そうそう。…って、キミ、絶対に他ではそんな事言わないようにね」
「はい。分かってます」
「本当に?何か、キミ達みたいな若い子は心配なのよね。怖いもの知らずというか…。もしかして、キミも一人旅かしら?」
「はい。たまには、遠くへ行ってみようと思ったんです」
「キミ達」と「キミも」という言葉に少し引っかかりを覚えたが、構わず何時間ぶりかの会話を進めていく事にする。
「ん~!いいよねぇ。旅は。私も若い頃は、良く列車に乗って旅行に行ってたわ」
「知らない世界を知る事ができるなんて、素敵な事ですよね」
「あら、いい事言うじゃない。また休暇もらって、しばらく旅に出ようかしら。次はどこがいいかしらね?」
雑貨屋のその台詞を聞き、長くなりそうだなと判断した僕は、会話を切り上げることにする。
「ところで今、何時だかわかりますか?」
「時間?えっと…、あら、店仕舞いね。もう十二時だわ」
「ありがとうございます。それじゃ、失礼します」
僕は一応、お礼を言って軽くお辞儀をする。本当のところ、あまり関わりたくはないので、サッサと歩き出す。
扉に手をかけたところで、後ろから声が飛んできた。
「次は、何か買っててねぇ、少年!」
あまり大きすぎない声で彼女はそう叫んだ。
どう返事をすればいいのか一瞬迷ったが、とりあえず、笑顔で会釈してごまかしておく。
これからの事を考えれば、あまり無駄なお金は使いたくないというのが本音だ。
 

雑貨屋を抜けるといよいよ個室車両になる。
今までとは雰囲気の異なる車両は、少し重たい空気が流れていた。
ココこそは、気を使って歩かねばならない場所だ。
物音を立て様ものなら、速攻で罵声が飛んでくるだろう。下手をしたら、怒鳴られるだけでは済まされない。
申し訳程度に通路に敷いてある絨毯は、踏まれすぎてペッタンコだった。
個室は、左右に二つずつ合計四つある。
明かりの付いている部屋が無いので、皆眠っているらしい。
「少し、安心するな…」
声になるかならないか位の音量で呟きながら歩き出す。
あと、もう少しで目的地だ。
個室車両は六両目と七両目で二つある。
六両目は寝静まっていて良かったが…。
「こっちは、どうだろう?」
一人になってから数時間、どうも独り言が増えてきたらしい。
ヤバイな…。
そんな、どうでもいい事を考えながら七両目の扉を開く。
「あれ?」
扉を開けると、そこは・・・。
「ダレもいない…?」
金持ちの人どころか、客すらいなかった。
どの部屋も扉が開いていて、中は闇に包まれている。
「客、少な…」
大丈夫かよこの鉄道会社…。
ますます思考が変な方向へいっている。
ガタン、ガタン…と列車は進む。
七両目を抜けると、八両目は荷物だけが乗せてある。
主に、六両目に乗っている金持ち連中の荷物だろうが・・・。五人に一人くらいの割合で一般客も利用しているらしい。
五人に一人といっても、全ての客を合わせても三十人前後しかいないのでたいした量ではない。
もうこの辺にくると、足音なんてものは気にしなくてなっていた。
普通のスピードで歩くと一車両は意外に短く感じる。
荷物車両を抜けると、次はこの列車に乗っている職員たちの部屋だ。
そこも、得に気を使わずに歩いてゆく。
やっとだな・・・。
「なんか、妙に遠かったな…」
出発したばかりの時に歩いた時はもっと近く感じた。
列車に乗ってすぐの事を思い出す。あの時は停車している間に移動したので歩きやすかったし、なにより気を使う必要が無かったからだろう。
最後の扉に手をかけながら、ここまでの道のりを改めて考えてみた。
少し、ためらいがあったが思い切って最後の扉を開く。
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