家に着くと、十分もしないうちに彼はやって来た。
近所のスーパーの袋を持って。
袋を見ると、しょうゆ以外にも色々と入っていそうだ。
「何を買ってきたんだよ?」
「色々とね。腹減ったし。プラス、差し入れの意味も込めて。」
そう言いって彼は、ウィンクをしてみせる。そして、しょう油とスナック菓子等のお菓子がたくさん入った袋を、僕の目の前に差し出した。
彼の場合、そんなキザな仕草も様になってしまうから恐ろしい。
「・・・。夕飯、作ってやるよ。お前のことだから、マジでお菓子だけで済ましそうだし。」
僕は、ため息混じりに答えながら袋を受け取った。
「マジで!?ラッキー!ちょー久しぶりジャン?お前の作ったもん食べんの。」
本当に、お菓子だけで夕飯を済ませる気だったらしい。
前にも一度聞いた事があったが、めったなことが無い限り、自分で料理をするという事はしないらしい。だいたいは、コンビ二の弁当や、ファミレスなんかで済ませると言っていた。
彼曰く、2・3日まともな食事をしていなくても、まったく問題がないらしい。
腹が減らない体質なんだと言っていたのだが。
それは、一体どんな体質なんだ?
「リクエストは?」
「オムライス。」
「だけでいいか?」
「充分!」
永夜は笑顔で台所にいる僕の所までやってくる。
彼は、嬉しいときは、本当に嬉しそうな顔をする。
ガキだよな。オムライス一つでそこまで喜べるなんて。
僕なんかは逆に感情が無さ過ぎて、過去に、「彼女」だった女に一度、本気で怒られた事がある。
どうでもいい話だが・・・。
「手伝うか?」
「いや、いい。お前が手伝うと余計に時間がかかる。」
「かなた。お前って、さり気なーくひどい事言うよな・・・。」
「事実だろ?」
冷蔵庫の中身を物色しながら、必要な物を考える。場合によっては、永夜に買出しに行って貰わなければならない。
「卵に、ピーマン、玉ねぎ・・・バターに牛乳・・・。」
「肉は、ひき肉がいい!」
「・・・。」
いらん注文をつけるな。
心の中でぼやきながら僕は冷蔵庫中を確認する。そして、こうゆう時に限って、ひき肉がしっかり冷蔵庫の中にあり、なおかつ、オムライスに必要な材料が全て揃っていたりする。
米を磨ぐために、流しに立つ。すると、自然に調味料の入った小さな棚が目に入る。
「あれ?」
思わず声に出てしまったが、おかしな事を発見したのだから仕方がない。棚には、しっかりとしょう油が収まっているのだ。永夜に買ってきてもらったしょう油はまだ、お菓子と一緒にカウンターの上だ。
確かに、しょう油が切れていたと思ったのだが・・・。
そして、もう一つ、おかしな事がある。調味料全てが、新品のようだ。
どれも、まったく減っていない。
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