「急がなきゃ・・・。」
一人つぶやきながら、階段を駆け下りる。
玄関を出て、少し駆け足でエレベーターホールへと向かい、表示を見ると一階に止まっていた。
自分の住んでいる階は六階。
待っている時間がもったいないと思い、現在にいたる。
階段を下りた勢いで、そのままマンションの玄関ホールを駆け抜ける。
余談ではあるが、ここは一応、高級マンションという部類に入る。そんなところに僕が一人で住んでいられるのは、購入してあるので家賃は必要無いのと、光熱費などの生活費は、父さんが生きていたころに、社長をしていた会社が払ってくれているからだ。
それに、月に一回、会社の人が様子を見に来る。
僕としては、何故そこまでしてくれるのか理解できない。ちなみに、期限は僕が学生でいる間。
ホールを抜ける途中、顔見知りのおばさんにぶつかりそうになったが、ぎりぎりで避ける。何か言われたが、笑顔でごまかしておく。このまま行けば間に合うかもしれない。頭の中でタイムスケジュールを即座に計算して導き出す。学校が始まるのは、八時半。つまり、あと二十分。信号待ちなどを考えてもなんとか間に合うはずだ。
「はあ、はあ、きっつ・・・。」
息切れしながらもなんとか走る。学校までは歩いて約三十分、自転車で十五分。では、走るとどれくらいかかるのか・・・?
「・・・・。何で、走ってるんだ?」
「バカだろ?お前。」
「うるさい。」
「普通に考えてありえないことだろ?」
「・・・。」
「いくら、急いでるからって、チャリ忘れるか?」
普段僕は、学校へは自転車で来ている。
頭の中で作ったタイムスケジュールも自転車で行けばの話しだ。だから、普通に考えて走って間に合うはずが無い。
結局学校に着いたのは、一時限目がとっくに始まった九時過ぎだった。
歩いた時よりも時間がかかるなんてありえない。
幸か不幸か今日は、文化祭前日なため授業はない。担任の先生も顔を出しには来たが出席はとっていないそうだ。
この学校はお祭りごとには必要以上に力を入れるようで、文化祭も三日間にわたって日程が組まれている。準備期間だって二ヶ月ある。
準備期間とは、授業が短縮になる事だ。普段よりも二時間近く早く終わることになっている。それでも足りないというクラスでは、自発的に夏休みから準備をするため、三ヶ月以上ある。
今日は、その文化祭の一日前という事で、一日中準備をする日となっていた。ちなみに、中間テストを終えた二週間前からは、授業は午前中だけで、午後はすべて準備時間に使われる。準備に忙しいクラスメイトを横目に僕らは話を続けていた。
といっても、僕が一方的に責められているだけなのだが・・・。