「なーに、一人で沈んでるんだよ。」
「ほら、これ旨いぞ、飲んでみろよ!」
「なあ、この家食いもん置いてないの?」
「あ、ああ。サンキュー。お前ら飲むペース速すぎ。なあ?後で中学行ってみないか?」
無理矢理にテンションをあげ、会話に加わるが、どうも気分が乗らない。こんな時間早く過ぎてしまえばいいのに。
「さんせー。オレ夜の学校って始めてかも」
「ところでさ、学校で思い出したんだけどさ。俺いつも思ってたんだけど、お前なんであんな中学行ったんだ?」
「あんなって言い方はないだろう?俺らが出た学校なんだから。でも俺も、お前は絶対私立に行くと思ってたよ。だって、経済的にも学力的にも何の問題もなく入れただろう?小学校も中学も。」
「ああ。小学校から私立に行く予定だったけど、母親がね、義務教育が終わるまでは、公立学校でいいじゃないかって、親父に抗議してたんだ。「私立では学べないものがたくさんあるから、絶対に近所の市立学校に入学させるんだ」って。」
「んじゃ、お前のマザコンもその辺が関係してるんだろうな。」
「・・・。しょうがないだろ?母親が唯一の理解者だったから・・・。」
「ふーん、そんなもんかね?」
僕は今でも覚えてる。
まだ、僕が四歳ぐらいの時の話だ。夜中に母さんと父さんが、僕のことでケンカしていたことを。父さんはすぐに自室にこもったが、母さんは決まってリビングで泣いていた。少し落ち着くと、僕の部屋へやってきて、ベッドに腰掛け僕の事をじっと見つめていた。
僕は、起きていたことをばれない様にするために、目が覚めたフリをして、一緒に寝てもいいかと尋ねていた。それは、小学校を卒業するまで続いた。
「そういやさ、他のやつらってどうしてんだろうな?」
友人の言葉で我に返った。
話は次々に変わってゆく。
「さあ?ここにいるメンバーとしか連絡とりあって無かったし、興味ないし。」
「って、そんなにあっさり言うなよ。もうすぐ成人式だし、それで会えんじゃない?」
この日は結局、学校には行かずにずっと飲み続けていた。解散したのは朝日が昇り始める少し前。
一人、泊まっていくとダダをこねたやつがいたが、問答無用で追い出してやった。
部屋は大分散らかっていたが、どうせ明日(今日)は休みだし、空き缶回収日でもないという理由からそのまま放置することにした。
シャワーを浴びてからベッドに入る。眠りに落ちる前に枕元のデジタル時計に目を向ける。
1999・11・1 土曜日 午前6時半。
PR