「オレらの他には誰も残ってないのか?」
「多分。さっき、放送かけたけど誰も来ないし。」
「放送?何のためにだよ?」
「先生が、俺たち以外に居るかどうか、確認するために流しとけって。ココ、集合場所で・・・お前聞いてなかったのか?」
「聞いてない。でもさ、かなた。こうゆう天気ってなんかテンション上がんない?」
「意味がわからない。」
「え~。何で?分かんないかな?バケツひっくり返したような雨とか、立っていられないくらいの勢いの風とか、すんごい音で鳴る雷とかさ!なんか、こう、血が騒ぐっての?無いの?そんなの?」
「全然。」
「冷たいなぁ。じゃあ、お前は何を見ればテンションが上がるわけ?」
と、問われて、はたと考え込む。
「何?無いの?」
無いわけないだろうと、返したい所だが何も浮かんでこない。
だいたい、自然にテンションが上がるという感覚が分からない。
僕は大抵、周りの人間に合わせてテンションの上げ下げをしている。
ただし、コイツのテンションにはまったく付いていけないので、コイツと一緒にいる時に限り僕のテンションはほぼ一定だ。
動く事はあったとしても、それは下がる時だけだ。
こんな話題は、さっさと変えようと思い何か話題を探すが見つからない。
「スポーツ観戦してる時とか、何か好きなことしてる時とか、ほら、今この文化祭前とか?
あっ、後は綺麗なお姉さん見た時とか?ってこれは絶対ありえないな、お前…。」
「そんな話しはどうでもいい。それより、お前、俺の他に誰か見なかったか?」
「それこそ、どうでもいいよ。」
「どうでもいいって、お前な…。」
「聞かれたって答えようが無いもん。」
「何で?」
「だってオレ、お前に起こされるまで寝てたから。」
どれくらい寝たか?なんて、あえて聞かないで置いたほうがいい、そう考えて、別のことを口にする。
「お前、何のために残ってんだよ?」
「ん?かなたと、お話をするために。」
ニヤリ。
と彼は笑う。
笑うと言っても楽しいとか、嬉しいといった感情とはまったくかけ離れた表情だ。時々、彼はこういう表情をする。僕には、彼がいったい何を思って、そういう表情をするのかが分からない。見ているこっちは、ますます気分が悪くなる。