二人分のコーヒーを手に、キッチンから少年は戻ってくる。
そして、カップを渡しながら改めて疑問に思っている事を尋ねてみる。
「で、何の用なわけ?」
「ホントはね、お前が言ってた「不思議な訪問者」に会いに来たんだけどさ、玄関で親に捕まっちゃってさ。」
「ふーん。てかさ、お前、勉強は?」
「ああ。それなら任せといて。」
そう言いながら、クラスメイトは背中のあたりから何かを取り出す。
「お前、鞄とか言うものは持ってないわけ?」
出てきたのは、明日のテスト科目の教科書2冊と問題集だ。
「って事で、一緒に勉強しようぜ!おれ、今日は・・・ん?今晩つーのかな?は泊まるから。テスト終ったら直でここ帰ってくるからヨロシク。」
「ヨロシク、じゃあねぇよ。せめて昼は家で食って来い。」
そんな、無駄な会話をしながらも手はしっかりと動いている。
問題集と教科書もリズム良くページが進んでいく。
その日は、結局徹夜で望んだテストの結果は来週にならなきゃわからない。
しかし、彼の元にやって来ていた「不思議な訪問者」はその日以降やってくる事は無かった。
理由はわからない。
テスト期間中、クラスメイトが交代で泊まりにきていたのも理由の1つだろう。
クラスメイトの話しでは、少年の様子がおかしい事から、友達の中で話し合って泊まりにくるようにしたらしい。
最初は、電話で済ますつもりだったが何の解決にもならなっかたから、無理やり押しかけたのだ。
そんなわけで、少年の元には平和が戻ってきた。
変わりに、冬休みに入るまで彼の元には必ず誰かクラスメイトが泊まりに来て休まる時が無かったようだが・・・。
終わり
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