窓の外に流れる景色は、見慣れたものとは雰囲気が異なる。
自分の知っている景色はレンガ造りの建物に囲まれた町。
そんな町を見下ろす、丘の上に建てられた大きなお城。いわゆる、城下町だ。人の数が多く、活気あふれた町。
この国で一番大きな町だった。その町を始まりとして、この国一番の長距離列車は走っていた。同じような列車はほかにも何本も出ているが、一番安くて、遠くまで行けるのがこの列車だった。
終着駅までは最短でも三日はかかる。それも、何事もなければの話しだ。
大抵は、車両故障や乗客間でのトラブル、避けようのない悪天候などに左右される。
これが、最新車両だとまた話が変わってくるが、料金の方も大分変わってくるので、大半の人間は、時間や快適さよりも安さを選ぶ。
その間も存在はするのだが、こちらは一日に走る本数が少ない。
ガタン、ガタン・・・・・・
花の咲き誇った草原や、木々が立ち並ぶ森の中。
大きな鉄橋に長いトンネル。小さな家が集まった、小さな村。
次の駅はどこだろうか?
通過する駅はたくさんあった。
ガタンガタン・・・
規則正しく、リズム刻んで走り行く。
終着駅は海の見える町。
始発駅は大きな町の中・・・。
変わり行く景色を眺めながら、頭では別の事を考える。
するとほら、また無人駅を通り過ぎた。明かりだけが馬鹿みたいに点いた無人駅。
寂しさを感じるのは僕だけだろうか?
沈みかけた夕日の差し込む車内には客が数人。
首都から出る長距離列車にしては客が少ない。
先頭車両の、一番前のボックス席へ陣取ってから三時間は過ぎただろうか?
これまでの事、これからの事など考える事は山ほどあった。
流れる景色を見ながら考える。不思議と三時間という時間も苦痛には感じられなかった。
すると、随分久しぶりにスピードが緩まった。
ガタン、ガタン・・・
レールを踏むリズムも自然とゆっくりなものになってゆく。
カーブか停車駅か・・・?
これまでの事を参考に考えてみるが、答えは最後まで分からない。
窓の外を眺めながら考える。薄暗くなり始めた空をバックにポツン、ポツンと遠くの方に灯りが見えた。