ガタン、ガタン・・・
目を覚ますと、列車内は先程よりも照明が落とされていた。
窓の外は真っ暗で、窓ガラスに映るのは、少し寝惚けた感じの自分の顔だった。
ガラスに顔を近付け、外を見る。
列車は、さっきまでとまったく違う景色の中にいた。
何も見えない中で、ただ広い場所を走っているという事だけが理解できた。
眠りに着く前は、山々と小さな町の中を走っていた。けれど、出発前にみた地図を考えると、現在走っているのは何もない荒野らしい。
灯りのない世界は恐怖を感じる。
何も見えない窓に、視線を固定したまま考えた。あれから、どれくらいの時間がたったのだろうか?
少しだけの睡眠のはずが、熟睡してしまったらしく、時間の感覚がまるで無くなっていた。
一度気になると、どうしても知りたくなってしまう。しばらく悩んだ末に時間を知るために列車内を歩く事にした。
上手くいけば、どこかで時間が分かると思ったのだ。
ついでに、最後尾のデッキに出て風にあたろう。
列車は全部で九両ある。
先頭から最高尾まで行くのは、ちょっとした気晴らしには丁度いいのだ。
盗まれては困る物だけを身に付け、ボックス席を離れる。
ガタン、ガタン・・・
と、相変わらず列車はリズムを崩さすに走り続ける。
しばらくは、このままずっと真っ直ぐな道のりなのだろう。
先程よりは少しスピードが早いようだ。
あまり、足音をたてないようにゆっくりと歩く。
ガタン、ガタン・・・
揺れる車内は正直歩きづらかった。
薄暗いし、音を立てないよう気を付けて歩かなければならないので、余計だ。
一両目をなんとか通過し、連結部を歩く。
連結部の照明は、落としていないらしくかなり明るかった。
連結部と言っても、変に揺れたり、外だったりするわけではない。列車事態はボロいが、こうゆう面では最新設備が施されている。そして、最初はこの場から外を眺めていたのを思い出す。
扉を開けただけで、中にいる人たちからの舌打ちが聞こえてきた・・・。
どうやら、眩しいらしい。
慌てて扉を閉める。
悪いと思いながらも、静かに通過する、今の僕にはそれが精一杯だ。
二両目は、一両目とは違い少し混雑していた。全てのボックス席が埋まっているのだ。
列車の進行方向とは間逆に歩いているので、違和感がつきまとう。
三両目も今までと同じ普通の客車だ。こちらも、二両目と同じく客は結構乗っている。
空いていたのは一両目だけらしい。三両目を抜けると、次は食堂車だ。
食堂車は他の車両よりも、少し広く出来いる。しかも、何故か変に豪華に作ってあるで
外から見ても中からみても、ものすごく浮いている。
食堂車は薄暗いだけで、誰もいなかった。
「って事は…十一時は過ぎてるのか…」
食堂車は二三時までだ。
食堂車を過ぎて五両目へ。
五両目は、長旅の客に不便がないようにと雑貨屋が備わっていたりする。仕入は、各停車駅で行われるらしい。
ここはまだ、明かりが着いていた。
雑貨屋は二四時までだ。
これで、大分時間が絞れた。
「お客さま?どこへ行かれるのですか?」
何も買う気がないので、サッサと通り過ぎようと思っていたのだが・・・。
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