散々迷って辿り着いた場所は、異国情緒あふれるお化け屋敷だった。周りを見回すと、正に高級住宅街というやつで、どれも馬鹿みたいに敷地が広い家ばかりだ。そんな中、目の前にあるものは半端じゃなく浮いている。姿が違えば一番立派な家だったに違いないが。
「ん~・・・。」
それを前に、永夜が唸り声をあげる。
「何だよ?」
「やっぱ、お前のパパ上が何考えてるのかさっぱりだ。」
目の前にあるのは蔦の絡まった洋風なお屋敷。表札に苗字代わりに書かれていたのは貝楼邸という文字だった。
「それは、俺も思う。」
「まずさ、玄関開けるまでが大変だよね。」
「そうだな、辿り着ければいいな・・・今日中に。」
自分たちの目の前にあるのは立派な門、それは軽く二人の身長をこしている。そして、その門の向こうに広がる庭には、小さなジャングルが広がっていた。荒れ果てた庭というのはこうゆうのを言うのだろう。
「とりあえず、入ってみる?」
永夜に聞かれ僕は頷く。
ここで、一つのめの鍵が必要になる。ポケットから取り出した鍵と目の前の鍵穴とを見比べる。
「大きさからいってこれだよな。」
「だね。」
一番大きな鍵を選び出し、ためしに鍵穴に差してみる。
「どう?」
「開かないけど、多分あってる。」
鍵は中々回らない。長年放置されていた証拠だろう。鍵穴にすんなりと収まり、何かに引っかかってはいるのだが、それを動かすにはコツがいりそうだ。
「多分?」
「古いから・・・だと思う。」
「あ~、なるほど。」
しばらく、がちゃがちゃと鍵を適当に動かし続けていると、カチという音と共に手に確かな感触伝わってくる。
「あ、開いた」
ゆっくりと開こうとするが、まずロックを外すための取っ手すらまったく動く気配がない。複雑な模様の描かれた鉄製のそれは、重く僕らの侵入を拒んでるようだった。
「硬い、錆び付いてるんだと思うけど。」
「オレもやってみる。」
永夜が手をかけ、何度か動かそうとするが、やはり動く気配はない。
「ほぉ~、やる気だな。門の癖に。」
「おい、門扉にケンカ売るなよ。」
「よっ!」
僕の言葉など、聞こえていないらしく、彼は取っ手に体重をけた。
「うおっ。うっわ、ちょっタンマ!」
ガチンという音と共に取っ手が下がり、彼はバランスを崩し門扉に寄りかかるが、ロックの掛かっていないそれは、簡単に向こう側へと動いてしまう。
「良く耐えたな。」
「まぁね。」
門扉は完全に開く事はない。なぜなら、その向こうは雑草たちがこれでもかというほど、好き放題にのびているのだ。
永夜は無理な姿勢からなんとか立ち戻ると改めて建物を眺める。
「どうやって、進もうか・・・。」
「このまま、帰ってしまいたいと思うのは俺だけか?」
「なに言ってんのさ?かなた。これからだよこれから、物語は始まったばっかりだよ?」
「でも、コレだぞ?どうやって進むんだよ?」
「う~ん。なんとかして?」
「いっその事、燃やしてしまおうか?」
「いや、かなた。それはマズイよ。大変な事になっちゃう。」
「冗談だよ。お前、なんとかできないのか?」
「オレ?ムリムリ。さすがのオレも雑草に人生ジャマされたことないからさ。」
「突き進むしかないのか。」
「だね。今度、業者に頼むのもアリだけどね。」
「・・・金かかるだろ?」
「かなた、それくらいは持ってるでしょ?」
「無駄遣いはしたくない。」
「ケチだなぁ。」
「じゃあ、行くか。お前、先な。」
「了解デス。」
建物のちょうど中央に位置する玄関までは真っすぐ突き進めばいい。
今が夏じゃなくて良かった。心の底からそう思う。
第一に肌の露出が少ない。そして、草花も枯れ始めているために幾分か進みやすいだろう。覚悟を決めて、雑草の中を掻き分ける。
先頭を彼に譲ったのは少しでも楽な方を選んだからだ。
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