気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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「現実だろうが、非現実だろうが、夢を見るのは大切なことだと、オレは思う。」
そして、何の前触れもなく語りだす。
「そもそも、最初に思ったのはオレがまだ十歳にもならない頃だ。ちょっと変わった、蒐集家のじい様に悪魔召喚と不老不死の話聞いて、何でか自分にならできると思った。単純な興味からなんだ。べつに、心からなりたかったわけじゃない。」
手に持ったカップはそれ以上動くことはない。変わりに僕が、一口だけゆっくりと飲み込んだ。
「その時は周りの世界なんて興味なくて、ただじい様がしてくれる話だけがオレの世界だった。けど、あの人も結構な年だったから、そんなに長くはなかった。うん。それからは、じい様が残した部屋がオレの世界になった。」
「らしくないな。」
「昔の話だからな。」
どこか、悲しげな笑顔で彼は言う。今では想像もつかない彼の世界の狭さ。
「けど、すぐに飽きるんだ。こんな世界は本当の世界じゃない。もっと、もっと広いはずだって。だから、そこから出る事を考えた。単純に勇気が欲しかったんだ。自分は何でもできるんだ、どこにでもいけるんだっていう。」
不透明な世界観。全てを語っていないだろうということはすぐに分かった。彼の言葉は、過去のほんの一部分にしかふれていない。
「それが、召喚して願いをかなえる事に繋がった。じい様にもできなかった事が自分にできれば、本当の自分を見つけられる気がしたんだ。」
「それが、理由か?」
「そう。大した理由じゃなくて悪いけど。」
「で、見つけられたのか?」
「何が?」
「本当の自分ってやつ。」
「うん。そうだね。見つけられたんじゃない?」
「曖昧だな。」
「そんなもんだよ、人生って。・・・成功したって分かってからは、勿体無いと思って部屋にあったもの全てに目を通した。それまで、まったく興味のなかったものをね。無知な事が怖いと思ったんだよ。でも、逆に色々と知る事が楽しいと気づいたんだ。だから、まずは知るための旅に出た。」
彼が良く口にする言葉「時間だけはたっぷりあったから」という言葉が甦る。良く分からない豆知識を彼独特の言葉で語っていた。それは、そんなに前から記憶していた事だと言う事だ。


「気づいた時には、二十年以上も経ってた。後悔しないようにしようと思ったのはそれからだよ。」
「お前・・・」
言っていること違わないか?
「何?」
「いや、なんでもない。」
なんとなく言わない方がいいと思った。彼には彼なりの生き方があったのだから、僕には否定する権利なんて微塵も存在しない。
「そっからだよ。何がなんでも楽しんでやろうって思ったのは。実際、オレ自由だったし。夢は、あればあるだけ、世界は広く見えるもんだよ。」
彼は語り下手かもしれない。
ここまで聞いてそんな事を思う。多分、言葉にはされないだけで、彼の頭の中にはしっかりと、話の流れが刻まれているのだろう。
「分かった。」
「何が?」
「お前の人生観」
「そう?」
「ああ、これからじっくり観察させてもらう。」
「え?今のオレの話聞いてくれてなかったの?」
「聞いてた。」
「だよね?」
「けど、ちっとも理解できない。お前の話し」
「う・・・。」
どうやら、省略して話した自覚はあるらしい。
「かなた。」
「何?」
「砂糖ない?」
まだ一口も飲まれてなかった紅茶を指し示しながら、申しわけなさそうに聞いてくる。
「話をすり替えるな。」
「だって、紅茶は砂糖入れなきゃ飲めないんだよ。」
「お前、一応は英国貴族様だよな?」
「いや、えっと。そうね。一応どころか、正真正銘・・・多分、きっとそうだけど、ほら人にはできる事とできない事があって・・・。」
「勝手に言ってろ。」
席を立ち、キッチンへ砂糖を取りに行く。
「ミルクは?」
「あ、大丈夫っす。」
変に敬語になった彼の返事を聞き流し、砂糖とミルクを持ってキッチンを出る。
しばらく、大して内容のない会話をしながら、彼の言葉に探りをいれてみるが、全て上手く交わされてしまった。
意味のない会話を打ち切り寝ようと言い出せたのはそれから、2時間以上もたってからだった。



「ユメカラ覚メタ」ラスト。
残すところあとわずか。
もうしばらくのお付き合いよろしくお願いいたします。
ご意見・ご感想頂けましたら大変嬉しく思います。
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