「気づいた時には、二十年以上も経ってた。後悔しないようにしようと思ったのはそれからだよ。」
「お前・・・」
言っていること違わないか?
「何?」
「いや、なんでもない。」
なんとなく言わない方がいいと思った。彼には彼なりの生き方があったのだから、僕には否定する権利なんて微塵も存在しない。
「そっからだよ。何がなんでも楽しんでやろうって思ったのは。実際、オレ自由だったし。夢は、あればあるだけ、世界は広く見えるもんだよ。」
彼は語り下手かもしれない。
ここまで聞いてそんな事を思う。多分、言葉にはされないだけで、彼の頭の中にはしっかりと、話の流れが刻まれているのだろう。
「分かった。」
「何が?」
「お前の人生観」
「そう?」
「ああ、これからじっくり観察させてもらう。」
「え?今のオレの話聞いてくれてなかったの?」
「聞いてた。」
「だよね?」
「けど、ちっとも理解できない。お前の話し」
「う・・・。」
どうやら、省略して話した自覚はあるらしい。
「かなた。」
「何?」
「砂糖ない?」
まだ一口も飲まれてなかった紅茶を指し示しながら、申しわけなさそうに聞いてくる。
「話をすり替えるな。」
「だって、紅茶は砂糖入れなきゃ飲めないんだよ。」
「お前、一応は英国貴族様だよな?」
「いや、えっと。そうね。一応どころか、正真正銘・・・多分、きっとそうだけど、ほら人にはできる事とできない事があって・・・。」
「勝手に言ってろ。」
席を立ち、キッチンへ砂糖を取りに行く。
「ミルクは?」
「あ、大丈夫っす。」
変に敬語になった彼の返事を聞き流し、砂糖とミルクを持ってキッチンを出る。
しばらく、大して内容のない会話をしながら、彼の言葉に探りをいれてみるが、全て上手く交わされてしまった。
意味のない会話を打ち切り寝ようと言い出せたのはそれから、2時間以上もたってからだった。
「ユメカラ覚メタ」ラスト。
残すところあとわずか。
もうしばらくのお付き合いよろしくお願いいたします。
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