「本当に、心当りないのか?かなた?」
「何の心当りだよ?夢を見るのに理由がいるのかよ?」
「だから、夢だけど、夢じゃないんだって。」
「だから、その意味が分からないって言ってるんだ。」
「う~ん。分かりやすく言うと、後半部分は夢で前半は実際にあったこと。」
「・・・・・・。」
彼の言う後半というのは、僕の家族が死んでしまった時の夢を見たことだろう。
コレぐらいは僕だって分かる。
あれは過去の出来事で、それを夢に見たということだろう。
しかし、分からないのは彼の言う前半部分。それが現実だという事だ。
前半部分というと・・・。
「覚えてない?」
「・・・?何を?」
僕が思考を巡らしていると彼が尋ねてくる。
彼の言うことは、時々理解しかねるときがある。
まず、第一に主語がない、第二に簡潔すぎる。さっきからそんなんばっかりだ。
「オレとの会話。」
「何時の?」
「9年前?かなぁ。」
「なな・・・年・・・?」
思考停止。
しかしそんなのは、一瞬で直る。
ここでようやく彼の意図に気がついたのだから。
「ちょっと待て!永夜!ふざけるのもいい加減しろ!七年前だって?ありえないだろ?もう、この話しはお終いだ!こんな、バカげた夢の話しを真剣に悩んだ僕が馬鹿だったんだ。飯、食い終わったのならさっさと帰れ!」
僕は一気にまくし立てた。
そうさ、彼は僕で遊んでいただけだ。ただの夢だっていうのに、バカみたいに混乱して・・・。七年も前に永夜と会話なんかするはずもない。
彼とは高校で出会ったのだから。
「はあ・・・ぁ。そこまで言われるとオレもショックだわ・・・。」
「・・・。」
まだ言うか、という意味を込めて視線を送るが伝わらない。
「本当に覚えてないのか?」
最初の質問をもう一度、彼は繰り返す。
だが、何度聞かれようが答えは同じ。そもそも具体的に何が聞きたいのかが分からない。
「だから・・」
「オレとお前の会話。今みたいに周りに誰もいなかったな。んで、やっぱり一人で怒ってるお前がいた。違うのは場所と天気ぐらいかな。」
尋ね返そうとしたが、僕の言葉は彼の言葉に打ち切られる。
淡々と語る永夜に怒りを忘れ、思わず聞き入っていた。
そして、天気と言われたことで視線はカーテンの閉まっていない窓の外へと向く。
雲ひとつ無い快晴だった。
夜なのに快晴はおかしいか・・・。
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