警察隊の連中だけでなく、レイブンやオネスト、たまたまその場に居合わせているエル女史。
皆、一様に驚いた表情で僕を見る。
「その前に、一つ確認しておきたい事があるんです。いいですか?」
「いいわ。あなたの話し聞いてみようじゃない」
答えたのはエル女史。
いいでしょ?と周りの人間に確認している。しかし、威圧的な視線を送りながらの確認なので、全員拒否できるわけが無い。
彼女は気付いているのだろうか?
「ありがとうございます」
僕は、エル女史に向かって軽く頭を下げる。
そして、分からないように深呼吸。
「聞いておきたい事は一つだけです。一つだけ確認させていただければ充分ですので。…聞きたい事というのは、中央銀行から盗まれたというお金の、金額の事です」
わざと、同じような言葉を繰り返して、ゆっくりと喋る。
相手に、きちんと聞いてもらって、こちらの話術にはまってもらうためだ。
「新聞には、一千万カスタと書いて有りましたけど。…実際は、そんなに盗まれてませんよね?」
周りの空気が凍りつく。
得に警察隊の皆さんは重症だ。
この反応だけで充分だ。
「なんだよ。それ、どうゆう意味だ?」
やはり、こうゆう時でも喋れるのはレイブンだけだ。
「貴様、何故それを・・・?」
決定打。
アシエがうめくように言葉を漏らす。
「ダメじゃないですか。簡単に機密事項もらしちゃ」
僕は笑いながらそんな事をいう。
「どういう意味か?なぜ、それを知っているかって?・・・どうしてだと思います?」
その場にいる全員に視線を巡らせる。
結構、上手くいっていると思っていたが、世の中そうはいかないらしい。
「どうしてだか分からないから、聞いてるんだろう?」
レイブンが、苛立った様子で至極当たり前な事を聞いてくる。PR