「ラスト10問」
「やっとか・・」
ここまで、無駄口を叩かずに黙々とやってきた。
最初は喋りながらやっていた。しかし、このままでは今日中に帰れないかもしれないということが、お互いの頭によぎったのだ。
そんな事を考えてから1時間ちょい、ついにラスト10問までこぎつけた。
「お世話になりました」
「そういう事は終わってから言え」
「はい」
「次は?」
「えっと・・・・・イギリスでは17世紀にピューリタン革命と・・・」
「名誉革命」
「2回の革命を合せて・・・」
「終わった~」
「はい。オツカレさん」
バンザイしながら喜ぶ彼を軽く睨みつけると、タイミング良くしっかりと目があった。
「アリガトウゴザイマシタ」
何故か片言でお礼を言われ、僕は思わず笑いそうになり、それをこらえながら返事をする。
「ん。どういたしまして。さ、帰りますか」
「イエッサー。仕度するので待って」
永夜を待つのに、時間を潰す為に窓辺に近づく。
外を見ると、日はすっかり落ちて黄色い満月がポッカリと浮いている。
「あ、永夜。ちょっと待った。今日、満月だ」
「あ~。十五夜だろ?」
「知ってたのか?」
「もちろん」
「全然気にしてなかった」
天気予報は気にするが、その日の空はあまり気にしていなかった。
時々、ふとした瞬間に見上げた空があまりにも綺麗で驚くが、彼の場合は毎日その空を気にしているのだろう。
「空を見るのは、暦を知るのと同じ事だかんね。つまり、カレンダー見るのと一緒」
「じゃあ、お前約1ヶ月他とズレてるって事になるな」
「やだな。オレ、別に月だけ見て生きてないよ。色々ひっくるめて見るんだって」
「陰陽師だな」
「一応そのつもりだけど?」
真面目な顔して彼はそう返す。
冗談に聞こえないから恐ろしい。
「訳わかんないこと言ってないで、さっさと仕度しろ。先帰るぞ」
「え、ちょっと。かなた。今まで待っててくれたんだから、最後まで待ってようよ」
「じゃあ、口じゃなくて、手動かせ」
彼の手元に視線をおくる。先ほどから鞄のチャックを開けたり閉めたりしているだけで、机の上はまったく片付いていない。
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