「おや、まだ残ってたのかい?」
「ええ、相方が居残りで」
食堂に着くと、おばちゃんが元気良く話し掛けてくる。
「永夜ちゃんが?」
「はい」
「珍しいな、あいつが居残りなんて」
おばちゃんと僕の会話に調理師の若いお兄さんも加わってきた。僕らは放課後良く食堂に居座っているのだ。おかげで顔も名前も覚えられている。
「それで、何か買いにきたのかい?」
「ええ。何かすっかりやる気ないみたいで」
「やっぱり、かなたちゃんは友達思いだね~」
「いえ、別に。早く帰りたいだけなんで」
「それでも、待っててやるんだから友達思いだろ?で、何買ってく?ポテトとから揚げならサービスで今すぐ揚げてやるけど?」
「あ、じゃあお願いします」
軽く頭を下げて、お願いする。よっぽど親しくなければ―気に入られなければともいう―こんなことはしてくれない。
「はい。了解」
フライドポテト・から揚げ・オレンジジュース2個をお土産に教室へと戻る。
ガラッ
遠慮なく音をたて、教室のドアを開く。
中には予想通り、教室中央に永夜の姿がある。
何故か彼は、自分の窓側の席には座らずに人様の席に座っているのだ。
机に突っ伏し、降参状態だ。
一瞬寝ているのではないかと心配になったがそんな事はないようだ。
机の下の足がパタパタと動いている。
「永夜、休憩。ほれ」
名を呼び、彼と視線が合ったのを確認してから、パックのジュースを放り投げる。
「え?何?うぉ!?」
どうにかという感じでジュースをキャッチしたそれを見るなり、彼は満面の笑みを作る。
「サンキュー!!」
「どういたしまして」
彼の前の席に着き、買って来たものを広げる。両方とも油っぽいので、勉強中には不向きだが仕方がない。
「金出すよ。割り勘な」
「いいよ。これぐらい」
実際、この3つを足しても500円にもならない。
「ん~、でもな~。おごられぱっなしは納得いかない」
たかだか数百円でも彼はかなりこだわる。逆の立場だと全然言わないのだが、何かされっぱなしなのは許せないらしい。
「・・・・だったら、早くそれを終わらせてくれ」
「うっ。それは・・・ちょっと・・・」
「おら、さっさと終わらせるぞ」
「りょーかい」
椅子の向きを変え、教科書を手に取る。
永夜の手元のプリントと見比べて教科書をめくる。
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