気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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「こんなところにいるのか?」

「お、その言い方はなんだか分かったな」

「そりゃあ」

「去年見たんだよ。だから今年もいる」

「一応聞くが、どこまで入るんだ?」

「そんな奥じゃないからご心配なく~」

わざと道から外れ、雑草の中を突き進む。

道路の街灯がどうにか届いているがそれもすぐになくなるだろう。

足元を見ずに永夜を信じて前へと進む。

見ていてもただの暗闇で逆に恐怖を感じるのであえて見ない。

「初めて見るかも」

ポツリと、会話をしようと思ったわけでもないが、そんな風に呟いた。

「そうなん?」

それを当然のように彼は拾う。

「見ようと思ったこともない」

「まあ、確かに。らしいっちゃらしいけど」

「なんだよ、らしいって」

「だって、かなた。完全なインドア派じゃん」

普段の自分を想像して、確かにその通りなので返す言葉もない。

「オレが誘わないと、部屋で本読んでるか、料理してるか、掃除してるかでしょ?」

「いいだろ、別に。やりたくてやってるんだ」

「まあ、問題はないけどさ。たまにはいいじゃん」

「俺はお前は出かけすぎだと思うけど」

「つまり?」

「たまには、家事をやれ」

「ははは、気が向いたらね~」

「ったく」

「あ、かなた。し~っ!」

急に黙れと言われて思わず立ち止まる。

気がつけばあたりはシーンとしていて、車の音などの雑音が聞こえない。

しかし、耳を澄ませば水音が聞こえる。

近くに小さな川があるらしい。

「かなた」

小さな声で名前を呼ばれ、彼に視線を向けると小さく手招きしている。

僕が動き出したのを確認すると、彼はその場にしゃがみこんだ。

同じように彼の横にしゃがむと、得意そうに笑って前方を指差す。

「な、言っただろ」

小さな光があちこちに飛び交っている。

星のようだけどまったく違う。自ら光るなんて考えるとすごいなと素直に思う。

「蛍って、蝉と似てるんだ」

「え?」

永夜の声に我に返る。

「1年かけて成虫になって、こうして飛んで光ってるのはほんの2週間くらいなんだ」

「コケの上に卵産んで、孵化したら水の中で生きる。それから土の中に戻って成虫になるんだ。生まれてから死ぬまでずーっとこの場所で過ごす」

何を考えているのかなんて分かるはずもない。

けれど、ただ蛍について話しているという感じはしない。

「せっかくだから問題。ああやって光ってるのは、オスかメスか?」

しばらく二人して黙っていたが、何か思いついたように永夜が喋りだす。

もちろん蛍が逃げないように小さな声で。

「オスじゃないのか?」

メスを呼ぶために光ってると聞いたことがあった気がした。

「ハズレ。正解は両方」

「それ、反則」

「んなこと無いって。オスのほうが光が強いけど、メスも光ってるんだよ。ほら、飛び回ってるのがオスで、下の葉っぱの上にいるのがメス」

「何でそんなに詳しいんだよ」

「去年調べた」

「何で?」

「去年、見たときは偶々だった。もう一回見たくて、1週間後くらいに行ったらまったくいなかったんだ。その前にはあんなに飛んでたのに何でだろうって思ってね」

「へぇ」

夏の暑さの中生きてゆくのは、彼らのような小さな命には大変なことなのだろう。

だから、精一杯短い命を次の命へと繋ぐために、全力で生きてる。

例えようのない重みが胸の中に生まれ、自分たちの存在ついて嫌でも考えさせられる。

彼らは自分のためにではなく、次のために生きている。

「なんかさ、真似できないよね」

「そういうレベルの話じゃないだろ?」

「そう?オレらは、自分のために、自分が、って生きてるのにさ」

「俺達にはもう無理な話だろう?先がダメなら周りのためにとか」

「うわ、なんからしくない言葉」

「お前に言われたくはない」

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