「・・・文字をもたないのに、大層なものを残してるみたいだからな」
互いに、違うことに集中しながら会話をするので、独り言のように間があいてしまう。
軽く勢いをつけて手を離すと、自動的にパタンと冷蔵庫が閉まる。
カボチャの煮物にカボチャのスープ、ソテーにグラタン、プディング、アイスにすると保存がきくか・・・・。
鶏肉と卵を両手に持って、流しに向かう。
カボチャはまだまだ調理できそうもない。
「ケルト人ってのは、紀元前600年頃に古代ギリシア人が異民族を「ケルトイ」って呼んだのが始めで、それはケルト語を話す分化集団の名称で国や人種の事じゃないんだ」
単調な作業になったらしく、彼の意識は喋る方に向いている。
「つまり、ケルト語を話す人がいれば、そこがケルトなのか?」
「ん~。まあそうゆう事だね。でも、正確には言語・考古・神話・美術などからなる、ヨーロッパの特定の文化をケルトと言うんだ」
「難しいな」
「それが面白いんだろ。カボチャ、削ったのどうすればいい?」
「じゃ、コレに入れといて」
大き目のボウルを取り出し、彼に渡す。
「まあ、そんなケルトの人たちにとって明日は冬の始まりな訳。つまり、今日は夏の終わりにあたる」
「夏と冬しかないのか?」
「うん。そもそも、日本みたいに四季がはっきりしてる方が珍しいんだ。驚く事じゃない」
「だよな」
「そんな夏の終わりは、収穫の時期。そんな収穫を祝い、悪い自然霊や魔女などを追い払うそれがケルト・ドルトイ教の祭り」
「あれ?ケルトってヨローッパにあったんだよな?アメリカでやってるのは何なんだ?」
かぼちゃが来ないかぎり料理は進まない。永夜が削っているのを眺めながら、僕は尋ねる。
「ん~。アメリカのはキリスト教の万聖節の準備の前夜祭で、それにアメリカに移り住んでいたケルト民族がケルトの祭りの要素を加えた。つまり、ヨーロッパ経由で米国に持ち込まれた風習って事」
「アメリカ発祥じゃなかったんだ。意外だな」
「そ、ちなみに日本で大きく広まったのは2000年前後。最近の話だったりするわけだ。一応、引き金引いたのは、日本最大のテーマパークさんだって言われてる」
「あの、2足歩行のネズミがいる?」
「その表現もどうかと思うけど、97年からイベント始めたっていうから、ドンピシャだと思うけど、もう1こ説がある。イギリス産まれの魔法使いで、何気なく錬金術ちっくなものが出てくる」
「ああ、あのおかしな社会現象おこしたやつね。俺は、朝から本屋に並ぶ人間を始めてみた。あの時の日本人の凄さを思い知ったよ」
「いや、おもしろい視点だね。かなた。オレ、はたった今お前が凄いと思ったよ」
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