漸く家に辿り着いた頃にはすっかり日は落ち、部屋の中は闇と化していた。
「なんで爆笑してたんだ?あの女。失礼なやつだな」
玄関の扉を押さえる僕に彼はそんな事を言い始める。
「何?まだ言ってんのか?」
「だって、オレには理解できん」
「一生、言ってろ」
素っ頓狂な永夜の声を聞き、彼女は余計に笑いを堪える事が出来なくなり、僕らが降りるまで笑い続けていた。それが、彼はとっても不満らしい。
部屋の明かりを点け、窓を開ける。少し寒いが、空気の入れ替えをしなきゃ気がすまない。
「かなた!新聞紙無かったっけ?」
「・・・彫るなら外でやれ」
「え~!何で?寒いじゃん、暗いじゃん、寂しいじゃん」
「うるさい。部屋が汚れるだろ?」
「いや、だから新聞紙を」
「新聞なんて取ってないだろ」
「あ、そうだっけ?じゃ、キッチンでやる。それなら文句ないだろ?」
これ以上は無意味だと判断し、適当なところで折れる事にする。彼がどこで何をしようと僕には関係ない。
「片付けは自分でやれよ?」
「りょーかい」
カボチャとの戦いを始める彼を横目に僕は冷蔵庫を物色する。
買い物してくれば良かったな・・・。
「なぁ、カボチャ以外に何食う?」
「え?何?他に何か作ってくれんの?」
「当たり前だろ。何より、俺が納得いかない、カボチャだけの夕飯なんて」
「そらそうか。うん。折角、前夜祭なんだから豪華に行こう!」
「前夜祭?何の?」
「サヴァンの祭りの」
「は?」
「明日は、11月1日冬の始まりを祝うサヴァンの祭りなの。で、今日はそれの前夜祭」
「どこの、何の祭りだよ」
「ケルトの古い祭り」
「ケルト?」
聞いた事ある気がするが、なんなのかまったく分からない。そもそも、サヴァンという言葉は初めて耳にする言葉だ。
「うん。ケルト人。知らない?オレのご先祖様なんだけど」
「それは信じていい情報か?」
「いや、先祖かどうかはオレも知らない。でも完全に否定は出来ないよ」
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