気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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「悪かったな。押さえててやるから、さっさと取れ。」
椅子の背もたれに手を掛け彼を促す。
「結局オレがやるの?」
「お前な・・・。」
わざと声を低く出し、彼を睨みつける。
「分かった、分かりました。オレがやらせて頂きます。よっと。」
「落とすぞ。」
彼の言葉を聞き、椅子から一端手を離す。
「うわ、それは痛いからやめてください。」
椅子の上から見下ろす形で、僕の顔を見ながら彼が痛そうな顔して言うので、椅子を押さえることに集中する。
「どうだ?」
彼が時計を手に取るのを確認してから、声をかけた。
「う~ん。太陽電池なのかなとも思ったけど違うみたい。普通の電池で動く時計だ。ほら。」
時計を指し出され、それを受け取る。
「ほこりまみれだな。」
「そりゃあ、そうでしょっと。」
タンっと危なげも無く、椅子から軽く勢いをつけて永夜は飛び降りる。彼の反動で椅子が少しだけ動いた。
「普通だな。」
何も変わったところなんてない。そこまでは声に出さずに時計を確かめる。裏側には電池を入れるスペース・時間を調節するネジと製作者のサインが存在するだけで特に目立った特長は無かった。
「一之瀬家の七不思議ができそうだ。」
「何だよ、それは。」
「不思議その一、瓶に入った遺灰。その二、七色の招き猫たち。その三、箱に入った古いカギ。そして、その四、動き続ける時計って。」
それっぽいタイトルを挙げてゆき、少し得意げに感想を待っている。
「残り3つは?」
「え?そっちに話し持ってくの?」
「もうネタ切れなんだろう?」
「じゃあ、大募集中ってことで。」
「逃げるのかよ?」
「違う違う、皆で参加型のイベントなんだよ。」
「もう、訳分かんねぇ。」
冗談半分に会話をしていても、事は先に進まない。
「それに、今は時計の話をしてるんだ。話をずらすな。」
時計片手に、原因は何かと考えてみるが、ふと気づく事がある。



「もう、いいんじゃない?」
「え?」
永夜が呆れたような声音でそんな事を言い出す。
「もぅいいじゃん。別にさ。この時計は動きたいから動いてた。それだけ!」
同じような事を思いついても、表現の仕方がまるで違う。
「それに、世の中人間に解決できない事の一つや二つあったって、おかしくともなんともないよ。ほら、オレらっていう存在も十分におかしい訳だし。」
そこまで言われてしまうとまったく反論できなくなってしまう。
「止まることのない時計と、死ぬ事のないオレら。仲良くやっていけそうな気がしない?」
口を開かない僕を置いて彼は喋り続ける。
「だから、気にしないって事で。」
「だからの意味がわからない。」
「だから。気にしない、気にしない。」
ふざけた笑みを浮かべて同じ言葉を繰り返す永夜を見ていると、全てをどうでも良く感じ始めるから、不思議なもんだ。
本気で悩んでいる自分が馬鹿らしく思えてきて仕方がない。
「何でお前はそんなにのん気なんだよ?」
「え?」
思わず口にした言葉に、自分でも驚いたが、永夜のほうが意外そうな、驚きの表情を作っていた。
「そりゃあ、決まってんじゃん。人生楽しんだもん勝ちだから。」
当然のように胸をはって答える。
「長さなんて、結局のとこ関係ないんだよ。その与えられた時間・条件の中で、自分がどうやって生きるか、何をするか。それが、人それぞれの生き方に繋がる。何も行動を起こさなきゃ、何も起こらないまま終わるからね。」
しかし、人生そんな上手いこといかないだろう?言葉にはしないが僕の疑問は沈黙を保つだけで充分に伝わる。
「そりゃあ、上手く行かない事のほうが多いよ。でもさ、その中で時々、本当に上手く行く時がある。そんな時、すっごい楽しいって思えないか?」
永夜独特の人生の価値観。
「だから、オレは、常に全力で生きてきた。確かに、人よりずっと長く生きてるけど、その瞬間ってのは、その時だけで、今後二度と同じ状況には出会わない。毎回必ず何かが違う出来事が起こる。それは変わらない。」
僕は黙って彼の話を聞いていた。
手の中にある時計から、時を刻む音が聞こえてくる。

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