気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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「んで、何出すんだ?水か?」
「いや、別に水はいらない。卵…」
「はあ?卵ぉ?何に使うんだよ、んなもん。」
「最後まで聞け、バカが。」
「ひどっ。」
最後まで聞かない方が悪いに決まってる。卵なんて、今どう考えても必要なものとは思えないじゃないか。
「で?何?卵がなんなの?」
「その、卵が入った容器上げてみん。ああ、くれぐれも卵は落とすなよ。」
「よっ、っと。…うわ、マジかよ。へそくりじゃあるまいし…。」
「中々、面白いところに入ってるだろう?」
「普通、鍵をこんなところにしまう人はいないと思うけど?」
少し、呆れた様子の永夜は無視して、鍵を受け取る。
思わず握りしめた鍵からは、キーンとした冷たさが伝わってくる。
最初は、母さんの部屋からだな…。
「あっ、永夜!卵戻しとけよ。」
永夜に命じておいて自分はさっさと廊下に向かうが、ふっと思いなおして部屋から出ずに彼を待つ。
「はいよ!ったく、人使いの荒いパートーナーだな。」
「聞こえてるぞ、永夜。」
リビングのドアに寄りかかり、彼を待つ。
「げっ。まだ居たの?」
「待っててやったんだ。」
いざ、開けるとなると、やっぱり気が進まない。
部屋の前に立つと、やはり胸が痛み出す。
鍵を持った手が震えてくるが、そんなのは無視だ。なぜ、ここまで自分の体は拒否を示すのだろうか?
「大丈夫か?」
黙ったまま、動かない僕を不信に思ったのか永夜が声を掛けてくる。
その言葉をきっかけに、僕は返事をせずに動き出す。
玄関なんかよりも、何倍も硬く感じる鍵を回そうとするが、なかなか鍵は動かない。
もう少し、力を込めてゆっくりと動かす。
何か引っ掛かりが取れたような感触がして、鍵が開いたことが分かる。
鍵を差したまま今度は、ドアノブに手を掛ける。
思ったよりも軽く回って、自分の予想と違い驚く。
錆び付いてるかと思ってた…。
一連の動作をするのに、ものすごく時間を掛けた気がするが実際は、永夜が一言も文句を言わずに待っていたのだから、そんなに掛かっていないだろう。
そんなことを考えながら、ドアを押し開ける。
「「・・・・・・・。」」
ドアの向こうに広がった世界は意外なものだった。

「なんて言うか…ツッコミどころ満載な部屋だな。」
おかしな感想をもらす永夜に、他に表現方法はないのかと抗議したかったが、生憎この部屋を完璧に表現できるような、ボキャブラリーを僕は持ち合わせていなかった。そんな訳で、文句を言っても意味が無い。
「お前の母親って何者?」
永夜が僕に尋ねながら電気をつける。
切れていないか心配だったが、何度か瞬いてしっかりと明かりがついた。
「な、何者って・・・普通の人だったと…思う…けど…?」
この部屋を見る前なら、断言できた。
しかし、この妙な部屋を見てしまった今では自信がない。
いや、でも普通の人だったハズだ。
少なくとも、僕の前では普通の人だった…。
だが、この部屋を見ていると違う気がしてくる。
はたして、前からこんな状態だったのだろうか?
そこで、こんな風にまともに母さんの部屋を見ることが、久方ぶりだった事に気がついた。
最後に見たのは、僕が小学生だった頃だ。
目の前に広がった世界は不思議なものだった。
壁や天井・床・カーテンも、全てが蒼い。そして、小さな化粧台や椅子といった家具は全てが白かった。
蒼と白の世界だ。それだけなら、まだマシだった。
白い棚の上に置いてあるものがかなり妙なモノなのだ。置いてある物は全部で七つ。それは全て異なる色をした招き猫だった。
赤い招き猫に始まり、橙・黄・緑・青・藍・紫と全部で七色。
蒼の世界の中に白いものが点在し、七色の「線」が存在する。
「青空と雲と虹って感じだな。」
同じ事を考えていたらしい永夜が呟いた。
「でも、何で招き猫なんだ?」
そして、当然の疑問を口にする。
「さあ?」
母は、何がしたかったのだろうか?考えてみるが、さっぱりわからない。
風水に凝っている訳でもなさそうだし…。
たまたま、招き猫だったのか、もしくは、招き猫でなくてはならなかったのか?どちらにせよ、大きく意味が違ってくる。
「この部屋は、このままにする…。」
「え?何で?掃除しないのか?」
「ああ。なんか、動かしちゃいけない気がするから。」
「まあ、確かに。全部意味ありげな位置に置いてあるもんな。」
部屋の物は全て、自然にそうなったと言われれば、そうなのだろうけれど、意味があってこうなのだと言われればそう見えてくる、そんな配置になっていた。
僕からしてみれば、部屋の扉を開いただけでも、大きな進歩だ。
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