「だって、何なんだよ?お前が言わないなら、オレが言おうか?」
「やめろ。もういいだろ?なぜ、そこまであの部屋にこだわる?」
「こだわってるのは、お前だろ、かなた。」
お前はいったい何を知っているんだ?なぜ、そんなに必死にあの部屋を見たがる?
お前には、まったく関係ないんだ。
「じゃあ、もう一つ質問。」
「へ?」
急な話題転換についていけない。
「な…」
何が訊きたいんだと、尋ねることは出来なかった。口が上手く回らない。
「あれ、何なの?」
そういって、彼が指差す先にあるのは、腰ぐらいまでの高さがある棚だった。そして、彼が「何だ?」と問うているのは、その上に置いてあるものだろう。
「見て…わかんないのか?十字架だ。」
「いや、幾らなんでも、それはわかるよ。うん。その前に並んでる四つのビンは何なんだよ?」
高さ十五センチくらいの十字架の前に五センチぐらいの高さのビンが三つとそれよりはもう少し高い香水ビンが一つ置かれている。
小さい三つのビンには、それぞれ七分目位まで砂のようなものが入っている。香水ビンは空だ。
「今までも、すっげー、気になってたんだけど、なんとなく訊かないで置いたんだけど、やっぱ、気になるモンは気になるのよ。」
正直に答えるか、適当にはぐらかすか、迷ったがどうせ直ぐにバレるだろうから、正直に答えることにした。
「見て分かんないのかよ?」
コレくらいふざけるのはアリだろう?
「分からないから訊いてるんじゃないか。」
「そうか?分かりそうなもんだけど?」
「だ・か・ら、分かってたら訊かねぇって。」
クスクスと、笑いが自然に漏れる。
「遺灰だよ。」
「へ?」
素っ頓狂な声を出して、目を点の様にしている。
そんなに意外な答えだろうか。
PR