一人になったところで、大きく伸びをする。
部屋の中は、いつもとは違う静けさが漂っていた。
閉まりっぱなしだったカーテンを開けるために、窓の方へと向かう。そういえば、先ほど彼も同じような行動をしていた事を思い出す。
カーテンを握り締め何を考えていたのだろうか?
閉ざされていた向こうの世界は、もうすでに、明るくなり始めているところだった。
「もう、夜明けか…。」
意外に時間が経過していた事に驚く。
「今日は何曜だったけか…つーか、今何時?」
時刻を確認しようと、振り返ったところで、僕の部屋の方から音が聞こえた。
「ジュウイチガツ、イツカ、ド、ヨウビ、ゴゼン、ロくジ、ニジュウロップン。」
変な途切れ方をする無機質な機械の声が、知りたい事を全て教えてくれた。
どうやら、永夜が枕元にあるデジタル時計の機能で遊んでいるらしい。
何となく、笑えるなと思いつつ、冷蔵庫へ向かう。
水の入ったペットボトルを一本持って、今度は部屋の真ん中に置いてあるソファに蹲る。
一瞬、このまま眠ってしまおうかとも思ったが、残念ながら今すぐに寝られるほどの眠気は無かった。
「まあ…あんだけ寝ればな…」
そういえば、一人暮らしを始めて、それまでと確実に変わったことが一つだけあった。
それは、独り言を言うようになった事だ。
そんな、くだらない事を考えながら、思考を切り替えてゆく。
さて、何から考えたらいいのだろう?
後悔しているかと?聞かれれば、していないと答えるだろう。
では、理由は…?
昔考えていた事?
そもそも、どうしてこのような状況になったのか…?
というより、理由なんてどうでもいい様な気がしてきた。
考えるのが面倒くさくなったとも言う。
こうなってしまったのだから、仕方がないんだ。
これから先、ありえないぐらい長いんだ。
自分にしては珍しい思考に、自分で驚く。
永夜を見習って、深く考えないようにしなければ、もたないだろう。これから先、色々と。
しかし、人間考えることを放棄したらどうなるのだろうか?
無意味に生きるのだけは避けたかった…。
けれど、このまま考え続けても答えは出ない気がする。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
自分で自分に問いかける。
それが分かっていれば最初から悩まずに済むか…。
振り出しへ戻る…か…。
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