古い煉瓦造りの建物がひっそりと、だがどうどうと建っている。
場所は、同じように古い建物が並ぶ坂の上。
坂の角度は結構きつい。
登りきるのはかなりの体力と時間が必要になるだろう。
そんな悪条件を、まるで気にしていないような・・・そ知らぬ顔で建物はあった。
高さは、普通の2階建てより高いが3階建てという事ではなさそうだ。
1階の天井が高いのか、2階の屋根が高いのかは、外からでは分からない。
建物の入り口付近には鉢植えに植えられた花々が所狭しと咲き誇っている。
丁寧に育てているというよりは、勝手に咲いているという雰囲気があった。
入り口ー木製の重たそうなドアーの真上にはこんな看板が掲げてある。
「あなたが探しているモノきっと見つかります」
という、少し長い文句の下に、控えめに
『夢想屋』
と店名が書かれている。
重いドアを押し開けると、ドアに付けられたベルが来客を告げる。
カランカラン。
と乾いたベルの音が何だか不思議と心地良い。
店内は、何故か照明が落とされていて薄暗く、入り口付近からでは奥まではまったく見えない状態だった。
そして、店の奥からはカチカチカチと時計の秒針の様な不思議な音が連続的に聞こえている。
店内を見回すと、壁に沿って背の高い棚が並んでいるように見えた。
棚の中に何が並んでいるのかは良くわからない。
店の中央には、長方形の机が2つ棚と平行に並べてある。
その上に並んでいるのは、わずかな照明を反射させ、キラキラと輝くアクセサリーのようなものだった。
奥へ進むと、サンタクロースに似たお爺さんがロッキングチェアに腰掛けている。
眠っているのか、起きているのかは良くわからない。
もしかすると、人形かもしれない。
そんな事を思ってしまうほど、お爺さんは身動き1つしなかった。
そして、どこからかともなく声が聞こえてくる。
「いらっしゃい。さぁ?キミの探し物は見つかったかい?」
間違いなく、声の発生源は目の前にいるお爺さんではではない。
PR