「なんだっけ?最近はやりの何とか教育?」
「ゆとり」
「そうそう、それ」
「が、何?」
土曜の学校という話しから、少しずれ教育問題まで語り始めようとする永夜は、フェンスに寄りかかり、空を仰ぐ。
「何でそんなことしたんだろうと思って」
「何でって?」
「う~ん、何か間違ってると思わない?」
「俺は、お前がこの話題を出した事を間違いだと思うけど?」
永夜と同じようにフェンスに寄りかかり、空ではなく彼の横顔に問いかける。
「冷たいなぁ。かなたは、もう少し相手をフォローしようとか思わないの?」
「お前を一々フォローしてたらキリが無い」
「う~ん・・・」
「今更だろう?何年こんな事やってると思ってるんだ」
「そりゃぁそうだ。しっかし、蒸し暑いなぁ、これじゃあ、帰る気しないよ。早く気温下がってくれないかね」
「まさか、お前夕方までここにいるつもりじゃないよな?」
「ん?そのまさかだけど?」
「俺、先帰るから。どうぞ、ごゆっくり」
フェンスから離れ、出入り口に向かって歩き出す。
確か、天気予報では夕方から雨だと言っていた。
「わぁ~、ちょっと待った!かなた!置いてくな、分かった。せめて、生徒が0になるまで・・・」
あと、数歩でドアに手が届くであろう場所で僕は立ち止まる。
振り返って、彼を睨む。
「ゼロって・・・お前。いつになるんだよそれは・・・」
「いや、何も完璧にゼロじゃないぞ?オレがゼロだと判断したら、ゼロになるんだよ」
「何でお前は、そんな適当なんだ」
「今更だろ?そんなの。何年こんな事やってると思ってるんだよ」
永夜は、先ほどの僕の台詞を真似てニッカリと笑顔を浮かべる。
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