「おい、いつまで桜に巻かれてるつもりだ?」
「え?」
「行くぞ」
驚いた表情のまま、振り返った彼の表情が面白い。
「へ?どこに?」
駅の方向とは逆方に向いてる僕を見て彼は不思議そうな顔をする。
「コンビニ」
僕の短的な一言に彼の表情がくるくる変とわる。
「で、簡単なもん買って花見をしないか?」
「いいね!賛成!!」
嬉々として返事をする彼を見てると、その喜びが僕にまで伝染してくる。
店内に入ると、それぞれ分かれて買い物をする。
僕は、おにぎりを2つに菓子パンを一つを手にとって考える。
何かお菓子を買おうと思い立ち陳列棚に向かう。
「お、何なんか買う?」
「ん。何かしら・・・・」
そこで、会った彼の手の中にはスナック菓子とサンドイッチ、パックのジュースが収まっている
「飲みもんは?」
「あ、そうか」
僕の手の中を見た彼が指摘してくる。
会計を終えて、店を出るともうすでに彼が待っていた。
「待たせた」
「んにゃ、全然」
自転車を押して、風上に向かう。
その方が、桜が散ってこないだろうと判断したためだ。
さすがに食事中に桜の花びらに囲まれたくはない。
座る場所もないので、自転車に寄りかかり食事をする。
互いにまずは飲み物から手にとった。
「んじゃ、まあ。今日の良き日に、乾杯」
彼が軽いウインクと共に、紙パックのジュースを軽く持ち上げる。
特に返しは期待していないらしい。
すぐに引っ込め、口へと運ぶ。
彼の一連の動作を見てから、自分も動き出す。
なんとなく、今日一日の事を思い出す。
「あ・・・」
「何?どうかした?」
知らぬ間に出ていた僕の声を聞き取った彼がわざわざ尋ねてきた。
「あ、いや。はい」
「え?」
教室で彼がやっていたように右手を差し出した。
「よろしく、永夜」
「おっしゃ。よろしく、かなた」
桜が舞い散るのを見ながら、僕らは固く握手する。
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