何も考えずに出ていた言葉
…ごめんなさい
「謝らないでください」
ごめんなさい…
どうにもならない事が
ある事は知っていた
だけど
それが
自分に起こるとは
思ってもいなかった
できると思っていた訳でもない
ましてや
奇跡が起こると思っていた訳でもない
もう少しだった…
「うん」
…あと少しだった
「うん」
いつだって
がむしゃらに
前だけを見て
自分との勝負だった
他人に勝てるなんて
思ったことないから
もしかしたらって思ったんだ…
「うん」
こみ上げる
思い飲み込んで
弱さ落とさぬように
ぎゅっと目を閉じた
気づいたら
彼女の胸の中だった
「大丈夫」
うん…
伝わってくる温もり
「見てたよ」
うん…
「一生懸命やってくれたよね」
うん…
だけどできなかった
「もういいよ」
「ありがとう」
抑えていたものが
音もなく外れた
あふれ出たのは
涙か
僕の思いか
ごめん…
「ううん」
…ありがとう
「うん」
ぎゅっと抱きしめたのは
彼女の腕か
僕の腕か
「行こっか」
彼女の言葉を聞いて
僕は彼女の手をひいた
…行こう
H20,04,12
ciel