自分も彼も自転車通学だったために、目的地までは自転車だ。
駐輪場で自分の自転車を見つけ、校門まで押してゆく。
校則で校内で乗ることは禁じられている。いつまで守っていられるかは分からないが、初日ぐらいは従うべきだろう。
自分たちを追い抜いていく先輩たちを横目にそう考えた。
「で、かなたの家はどこ?」
「何で?」
「・・・・友達の家は知っておくもんだろ?」
一瞬黙り込んだみたいだが、すぐに気を取り直して彼は会話を続けようと試みる。
「駅の近く。大きい公園のそば」
「公園って、あのでかい池がある?」
「そう。」
「桜が綺麗な?」
「ああ。」
僕が住む、マンションの近くに、結構大きな公園がある。
市内では桜の名所としてかなり有名な場所だ。
一度だけ、心霊話で盛り上がったが、それはすぐに消えてしまった。
「ちなみに、オレん家はこの通りから横道反れてしばらく行ったところ」
「あそ」
「ねぇ、もうちょっと人に興味持とうよ」
「何で?」
「じゃあ、せめて、興味あるふりしようよ」
「そうだな」
「あとさ、もうちょっと、会話を楽しもうよ」
「ああ、努力する」
「あれ?もしかしなくてもオレの事嫌い?」
「もちろん」
「・・・・・・・」
校門前で自転車に跨ろうと、立ち止まる。
彼を見ると、黙って地面と睨めっこしてる。
「・・・・、そんな事判断できるほど、お前の事知らないよ」
置いてくぞ。そう言い置いて、僕はペダルに足を置く。
「え?何?それって、どういう意味?」
「そのまんまだよ。お前なんか好きでも嫌いでもないよ」
「ほんと?じゃあ、今後もよろしく」
「知るかよ」
「わっ、ちょっと待った!置いてくなよ!」
「じゃあな」
まだ、自転車に乗ってもいない彼を置いて、僕はペダルに力を込めた。
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