放課後。
結局、まっすぐに帰ることが出来ずに、僕は家の近くの公園にいた。太陽はとっくの昔に沈んでいる。
ここからだと家まで五分もかからない。日が暮れた公園には僕以外に人はいなかった。
もともと、小さな公園なため昼間からあまり人がいないのだから、当たり前な話だ。
何もない公園だが僕にとっては思い出のつまった場所だ。
幼いころ、母さんと毎日のように遊びに来た。
たった一度だけれど、父さんとも遊びに来たことがある。
それなりに、大きな会社の社員だった父さんは、普段からまったく家にいなかった。
重要な仕事を任されることが多かった彼は、いつでも会社に駆けつけられるようにと、会社近くのホテルで一年の殆どを過ごしていた。
何年かすると、祖父が作り上げた会社なため父さんは自動的に社長になった。社長になった今でも、普段はまったく家にいない。むしろ、家にいる事のほうがめずらしいぐらいだ。
そして、会社の会長である祖父には頭があがらない。けれど、多分会長だからと言うわけではなく、そうなるように育てられたのだろう。
そんな事は別にどうだっていい。
僕が父さんの事も祖父の事も嫌いなことに代わりはないのだから。どうして嫌いなのかは分からない。祖父の場合は相手に嫌われているのだから、これは当然の事だろう。しかし、いつから父さんの事を嫌いになっていたのだろう?
「帰ろう。」
考えているのがバカバカしく思えてきた。今ならまだ間に合うかもしれない。
怒られるだろうけど・・・。仕方がない。
それに、このままだと、母さんを困らせてしまう。
そう思ったとたん僕は駆け出していた。
「ハア、ハア・・・。苦し…。」
短い距離でも、全力疾走すると息が切れる。ズボンのポケットから鍵をだして、オートロックを解く。
エレベーターを待つ間になんとか呼吸を整える。
「はあ~。久々に思いっきり走ったかも・・・。」
チーン。
少し間抜けな音がエレベーターの到着をつげる。
急いで乗り込むと階数を指定して、「閉まる」のボタンを押す。ゆっくりと上っていくのがもどかしくてしょうがない。
けれどこればっかりは仕方がないのだ。壁に寄りかかり、階数が増えてゆくのを見つめていた。
気のせいかひどく焦っている自分がいる。しかし、その反面ひどく冷静な自分もいた。
なんなんだ?
チーン。
目的の階に着くと先ほどと同じ音がしてエレベーターのドアが開く。さっきまでとは対照的に、ゆっくりとした歩みで玄関へ向かった。ドアに手を掛けておかしな事に気がついた。
「あれ?」
鍵が掛かっている?