「へぇ~。んで、何て出たんだ?」
何故か彼は、とても楽しそうに話す。彼の自然な笑顔を見ていると、こっちまで、そうゆう気分になってくる。
「知りたいのか?」
「教えてくれないのかよ?」
二人して、表情が例の妙な笑顔へ変わる。ただ、少し含まれているものに違いがあるだろうが。
「お前を見習うことにした。」
「ん?何だよ!それは、どうゆう意味だよ?」
「そのまんまの意味だよ。自分で自分に聞いてみな。」
「まあ、どっちにしろ、オレのおかげって事ね。ついでだから、そんな素晴らしいオレからアドバイス。」
何となく、引っかかる物言いをされて思わず睨んだが、彼はそんな事気にせず喋りだす。風呂へ向かいながら…。そして、僕に背中を向けながら。
「いいか、かなた。折角、生きてるんだからどうすれば、自分らしく楽しく生きられるか、楽に得して生きられるかを良く考えて生きろよ?」
そこまで、一気に喋ると一息ついて再び喋りだす。ここまで、喋った時点で、もうリビングのドアの前だ。
「それから、考える事を放棄してしまったら、その時点で人間は人間でなくなる。若干人間から外れてるオレらは、絶対に考える事を止めちゃいけないんだ。だから、悩むんじゃなくて、考えろ。悩むのと考えるのとはまったく違う事だから。」
彼らしくて、彼らしくない台詞。
どこまで、本気で言っているのだろうか?
そして、彼は振り返る。
「オレは、お前なんかよりもずーっと長生きしてるんだ。参考にしておいて損はないぞ!」
にっこりと微笑みながら、最後にそんな事を言う。
「ああ。忘れないでおくよ。」
そう、絶対に忘れない。こうやってした会話の一つ一つを覚えておかなければならないんだ。長すぎるこれからを生きるために。
どんなに、先が長くても、今日が、今日しか無いことは、この先絶対に変わらない事の一つだ。
「永夜、ありがとう。」
聞こえるか、聞こえないかの声で呟いた。
「ん?何か言ったか?あっ、そうそう、オレ、飯食ったら出かけるわ。」
やっぱ、聞こえないかと思いながら、返事をする。
もう、話題は次へと移っているのだから。
「どこ行くんだ?」
「駅。」
「何しに?」
ここまで、深く聞いてどうするのだろうか?
質問してる自分に、違和感を覚える。
「ん~。ちょっと、コインロッカーに預けた商売道具を取りにね。」
「あそ。じゃ俺は、買い物行っとくよ。」
いまいち、言ってることが分からないが、一応頷いておく。