「オレは、お前が気に入った。だから、こんな話をするんだ。いいな?」
さっきも、似たようなことを聞かれた気がするが・・・・。
「今まで、生きてきた中で初めてなんだ。お前みたいな、どうしょうもない奴に出会うのは。」
返事をする間もなく話しは進んでゆく、聞き捨てなら無いことを相手が言っているが、ここは大人になって口を挟まないで置いた方がいい。絶対に・・・。
しかし実際は、変な威圧感に負けて声を出せない・・・。
それにしても、ホメられているんだか、けなされているんだか分かったもんじゃない。他に表現方法はなかったのだろうか?
再び光と音が同時にやってくる。確実に近づいて来ている。雨、風、雷、全ての音がさっきよりも凄さが増している。
数秒の沈黙。そして雷。
「自分の・・・思うがままに、キミも自由と、永遠を手にしてみないか?」
光を背に、まるでどこかの悪役のような微笑を見せ、彼は言った。
そして、彼は表情を変える。
その瞬間、さっきまでとは、比べ物にならないくらいの威圧感・恐怖を感じる。
その顔は完璧な無表情。そして、座っていた机から、軽く勢いをつけて飛び降りる。
今度は座らずに寄りかかるだけに留め、両腕を胸の前で軽く組む。
「お前は、オレに言っただろう?大人にはなりたくない・・・と。だったら、ならなければいい。ずっと、このままのカタチで生きていけばいいんだ。ずーっと、子どものままでいればいい!だろう?何も迷うことは無い。」
僕の頭は、もうフリーズしかけている。
彼は組んでいた腕を解く。
「全てを捨てる覚悟がお前にはあるか?自分の願いを叶えるために、お前はどれだけのモノを捨てられる?全てお前次第だ。」
何を・・・言っているんだ?
声にはならない疑問が頭の中をグルグル回る。
意味が分からない。
「わからないか?・・・お前の願いを叶えてやると言ってるんだ。信じたくなければ信じなくていい。」
「選択肢は二つ。」
軽く右手を上げ、ブイサインをしてくる。
「Yes or No?」
妙に、流暢な発音で問いかけてくる。
しかし、あいにく僕の頭はフリーズ中だ。簡単な二択でも、そんなすぐには答えられない。
「時間はタップリある。ゆっくり考えろ。」
言われなくとも、そうする予定だ。まずは、頭の中を整理しよう。
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