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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

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1995年 10月31日 
その日は、文化祭前日なのにも関わらず下校時刻になる前から、ほとんどの生徒が帰宅していた。
残っているのは、学校の寮に入っている人と、物好きな人。それから、僕みたいに委員になっていて、帰りたくても帰れない人間だけだった。
なぜ、殆どの生徒が帰宅したかというと、突然、進路変更した季節外れの台風が原因だった。
このままだと、本番も実行されるかどうか怪しくなってくる。
無意味に残っていた生徒も夕方の五時を回る頃にはもういなくなっていた。
想像していたよりも、天気の荒れ具合が酷かったからだろう。
僕も、こんなに酷くなるとは思っていなかった。
おかげで今、学校から一歩も外に出られない状態だ。台風が過ぎるまで、数時間はこのままだろう。
自分の教室に戻ると男子生徒が一人、窓側の席で眠りこけていた。
「・・・・・・。」
彼の元まで行って、ふと考える。
「もしかして、ずっと寝てた・・・?」
授業が終わったのは、2時で少し喋ってから分かれたから、3時前か・・・で今が6時ちょっと前・・・・。腕時計と睨めっこしながら考える。

寝すぎだろ・・・・・・。



「オレら、帰れんのかな?」
「さあ?」
「さあ?ってお前、もうちょっと、こう、言い方ってもんがあんだろ?」
誰もいなくなった教室に、僕ら2人取り残されていた。
「言い方って?」
「いや、もういい。はあ・・・。」
何故、そこでお前がため息つくんだ?という疑問はあえて口にしないで置く。
きっと、ややこしくなるだろうから。
やらなければならない仕事が、なかなか上手くいかず、手こずっていたのと、先生からの無駄な仕事を引き受けてしまい、帰るタイミングをすっかり逃してしまったのが運の尽き・・・。
天気は素敵なぐらいに最悪だ。
僕の気分も、笑いたくなるくらいに最悪だった。
唯一救いなのが、この教室が文化祭には使われないと言う事だ。
あんな、バカみたいに派手に装飾した教室には、とてもじゃないが居られない。


「オレらの他には誰も残ってないのか?」
「多分。さっき、放送かけたけど誰も来ないし。」
「放送?何のためにだよ?」
「先生が、俺たち以外に居るかどうか、確認するために流しとけって。ココ、集合場所で・・・お前聞いてなかったのか?」
「聞いてない。でもさ、かなた。こうゆう天気ってなんかテンション上がんない?」
「意味がわからない。」
「え~。何で?分かんないかな?バケツひっくり返したような雨とか、立っていられないくらいの勢いの風とか、すんごい音で鳴る雷とかさ!なんか、こう、血が騒ぐっての?無いの?そんなの?」
「全然。」
「冷たいなぁ。じゃあ、お前は何を見ればテンションが上がるわけ?」
と、問われて、はたと考え込む。
「何?無いの?」
無いわけないだろうと、返したい所だが何も浮かんでこない。
だいたい、自然にテンションが上がるという感覚が分からない。
僕は大抵、周りの人間に合わせてテンションの上げ下げをしている。
ただし、コイツのテンションにはまったく付いていけないので、コイツと一緒にいる時に限り僕のテンションはほぼ一定だ。
動く事はあったとしても、それは下がる時だけだ。
こんな話題は、さっさと変えようと思い何か話題を探すが見つからない。
「スポーツ観戦してる時とか、何か好きなことしてる時とか、ほら、今この文化祭前とか?
あっ、後は綺麗なお姉さん見た時とか?ってこれは絶対ありえないな、お前…。」
「そんな話しはどうでもいい。それより、お前、俺の他に誰か見なかったか?」
「それこそ、どうでもいいよ。」
「どうでもいいって、お前な…。」
「聞かれたって答えようが無いもん。」
「何で?」
「だってオレ、お前に起こされるまで寝てたから。」
どれくらい寝たか?なんて、あえて聞かないで置いたほうがいい、そう考えて、別のことを口にする。
「お前、何のために残ってんだよ?」
「ん?かなたと、お話をするために。」
ニヤリ。
と彼は笑う。
笑うと言っても楽しいとか、嬉しいといった感情とはまったくかけ離れた表情だ。時々、彼はこういう表情をする。僕には、彼がいったい何を思って、そういう表情をするのかが分からない。見ているこっちは、ますます気分が悪くなる。


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